2.老齢年金の給付について

(1)老齢基礎年金を受給するのに必要な加入期間はどのぐらいですか?

老齢基礎年金を受給するには、国民年金の「保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間を含む)」と「保険料免除期間(免除期間、納付猶予期間、納付特例期間を含む)」と「合算対象期間(カラ期間)」を合計して原則として25年以上(平成29年4月からは10年に短縮予定)あることが必要です。
合算対象期間とは年金の受給資格期間には加えますが、年金額の計算には含めない期間のことをいいます。
たとえば、会社員の妻が昭和61年3月以前に国民年金に任意加入できたのにしなかった期間などです。
なお、受給資格期間には特例制度が設けられており、受給資格期間が15年~24年であっても老齢基礎年金が支給される場合もあります(下図参照)。

被用者年金制度の期間の特例

生年月日に応じて加入期間が20年~24年に短縮されます

生年月日 加入期間
昭和27年4月1日以前 20年
昭和27年4月2日~昭和28年4月1日 21年
昭和28年4月2日~昭和29年4月1日 22年
昭和29年4月2日~昭和30年4月1日 23年
昭和30年4月2日~昭和31年4月1日 24年

厚生年金保険の中高齢者の特例

男性40歳、女性は35歳以降の加入期間が15年~19年あれば、受給資格期間を満たすことができます

生年月日 加入期間
昭和22年4月1日以前 15年
昭和22年4月2日~昭和23年4月1日 16年
昭和23年4月2日~昭和24年4月1日 17年
昭和24年4月2日~昭和25年4月1日 18年
昭和25年4月2日~昭和26年4月1日 19年

(2)老齢基礎年金は何歳から受給できますか?

老齢基礎年金の支給開始年齢は原則として65歳ですが、希望すれば、60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受給することもできますし、66歳以降に繰り下げて受給することもできます。
この場合、繰り上げると年金額は繰り上げ1カ月につき0.5%減額され、繰り下げると年金額は繰り下げ1カ月につき0.7%増額されます。


昭和16年4月2日以降の生まれの場合

繰上げ減額率

請求時の年齢 減額率
60歳0ヵ月~60歳11ヵ月 30.0%~24.5%
61歳0ヵ月~61歳11ヵ月 24.0%~18.5%
62歳0ヵ月~62歳11ヵ月 18.0%~12.5%
63歳0ヵ月~63歳11ヵ月 12.0%~6.5%
64歳0ヵ月~64歳11ヵ月 6.0%~0.5%

【繰上げ請求のおもな注意事項】

  • ・年金額は請求時期に応じて減額され、減額率は一生変わりません。
  • ・繰上げ請求後、65歳前までに障害の状態になっても、障害基礎年金を受け取ることができない場合があります。
  • ・65歳になるまでは、遺族厚生年金を受給する権利があっても、どちらか一方の年金しか受け取ることができません。
  • ・寡婦年金を受け取ることができません。
  • ・国民年金に任意加入している間は、繰上げ請求することができません。

繰下げ増額率

請求時の年齢 増額率
66歳0ヵ月~66歳11ヵ月 8.4%~16.1%
67歳0ヵ月~67歳11ヵ月 16.8%~24.5%
68歳0ヵ月~68歳11ヵ月 25.2%~32.9%
69歳0ヵ月~69歳11ヵ月 33.6%~41.3%
70歳0ヵ月~ 42.0%

【繰下げ請求のおもな注意事項】

  • ・振替加算は、繰下げても増額はありません。
  • ・早く死亡すると年金の受取総額は、本来の年金支給よりも少なくなることがあります。
  • ・障害年金や遺族年金を受給している場合は、繰下げできません。
  • ・70歳以降も継続して繰下げたとしても増額はありません。


(3)老齢基礎年金の年金額はいくら受け取れますか?

老齢基礎年金の額は20歳から60歳になるまでの40年間の保険料をすべて納めた場合、年額780,100円(平成28年度価額)です。
途中で保険料を免除された免除期間や保険料を納めなかった未納期間がある場合にはその期間に応じて年金額が少なくなる仕組みです(下図参照)。

老齢基礎年金の計算式(国民年金保険料の免除期間等がある場合)

老齢基礎年金の計算式

(注)平成21年3月分までは、全額免除は6分の6、4分の1納付は6分の3、半額納付は6分の4、4分の3納付は6分の5にて、それぞれ計算されます。

(注)加入可能年数は、大正15年4月2日から昭和2年4月1日までに生まれた人は、25年に短縮されており、以降、昭和16年4月1日生まれの人まで生年月日に応じて26年から39年に短縮されています。

付加年金の計算式

第1号被保険者・任意加入被保険者が定額保険料に付加保険料(月額400円)を上乗せして納付すると、老齢基礎年金に付加年金がプラスされます。
付加年金の計算式は、次のとおりです。

200円×付加保険料納付月数



(4)老齢厚生年金は何歳から受け取れますか?

厚生年金保険の支給開始年齢は昭和61年の年金制度改正で60歳から65歳に引き上げられました。
ただし、急激に支給開始年齢を引き上げると混乱が生じるため、段階的に引き上げており、支給開始年齢は生年月日と性別で異なります。
60歳から65歳になるまでの間に支給される年金のことを「特別支給の老齢厚生年金」といい、「定額部分」と「報酬比例部分」からなります。
65歳から支給される年金のことを「老齢厚生年金」といいます。

老齢厚生年金の支給開始年齢の引き上げスケジュール

老齢厚生年金の支給開始年齢の引き上げスケジュール

【表の見方】昭和20年4月2日〜昭和22年4月1日生まれの男性は60歳から「報酬比例部分」の年金が支給され、63歳からは「定額部分」の年金が支給されます。65歳になると、報酬比例部分の年金は「老齢厚生年金」、定額部分の年金は「老齢基礎年金」とそれぞれ名称が変わります。


老齢年金支給イメージ図

【会社員世帯のケース】

夫は昭和20年4月2日生まれで退職まで会社員、妻は3歳年下の専業主婦

老齢年金支給イメージ図

【用語解説】

報酬比例部分 過去の報酬などで決定。
定額部分 加入期間の長さなど等で決定。
老齢厚生年金 報酬比例部分の年金が「老齢厚生年金」に名称変更。
老齢基礎年金 定額部分の年金が「老齢基礎年金」に名称変更。
経過的加算額 差額調整部分。
加給年金額 原則として20年以上(特例に該当する場合は15年~19年)の厚生年金保険の被保険者期間がある老齢厚生年金受給権者に生計を維持されている年収850万円未満の65歳未満の配偶者あるいは子の要件を満たす子がいれば支給。
配偶者に対する加給年金額は224,500円(平成28年度価額)で、老齢厚生年金の受給者の生年月日に応じて加算額33,200円~165,600円が特別加算として上乗せされます。
子に対する加給年金額は子の人数に応じて「子の加算額」が上乗せ支給されます。
子の加算額は1人目と2人目が各224,500円、3人目以降は1人につき74,800円です。
公的年金制度でいう「子」とは、18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子をいいます。
振替加算 加給年金額の対象者になっている配偶者が65歳になると、加給年金額は打ち切られますが、一定の条件を満たすと振替加算が支給されます。


(5)老齢厚生年金の年金額はいくら受け取れますか?

老齢厚生年金を受給するには老齢基礎年金と同様に、25年以上の受給資格期間と厚生年金保険に1カ月以上加入していたことが必要です。
受給資格期間には特例制度が設けられており、受給資格期間が15年~24年でも支給される場合もあります。
なお、特別支給の老齢厚生年金(60歳~65歳になるまで支給)は厚生年金保険の被保険者期間が12カ月以上なければ受給できません。

【60歳から64歳まで】

特別支給の老齢厚生年金=(A)報酬比例部分 +(B)定額部分 +(C)加給年金額

60歳から64歳まで

【65歳から】

老齢厚生年金=(A)報酬比例年金額 +(B)経過的加算額 +(C)加給年金額

65歳から

ただし、過去の報酬は現在の賃金水準に再評価した上で、平均するため、計算は非常に複雑です。
自分の年金加入記録に基づく年金額を知りたい場合には、50歳以上であれば、日本年金機構の年金事務所や街角の年金相談センターで年金額の試算をしてもらうことができます。その他、日本年金機構の「ねんきんネット」で試算したり、毎年1回、日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」にも自分の年金加入実績に基づく年金見込額が記載されていますのでご参考にしてみて下さい。



(6)会社に勤めながら年金はもらえますか?~在職老齢年金~

「在職老齢年金制度」といい、老齢厚生年金の受給権者が60歳以降も厚生年金保険の適用事業所で働く場合、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となることがあります。
60歳から65歳未満と65歳以上では支給停止の計算方法が異なります。
具体的には基本月額(年金額÷12か月)と②総報酬月額相当額(その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計額÷12か月)に応じた額が支給停止となります。

60歳以上65歳になるまでの在職老齢年金早見表(厚生年金基金加入者を除く)

(単位:万円)

60歳以上65歳になるまでの在職老齢年金早見表

(注)高年齢雇用継続給付金を受けられる場合は在職による年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止になります。

【表の見方】総報酬月額相当額25万円(横軸)の人が年金月額10万円(縦軸)の場合、在職老齢年金により6.5万円の年金が支給されます。したがって、年金月額10万円が3.5万円減額されて6.5万円のみ支給されます。

65歳以上の在職老齢年金早見表(厚生年金基金加入者を除く)

(単位:万円)

65歳以上の在職老齢年金早見表(厚生年金基金加入者を除く)

(注)老齢基礎年金は調整されず、全額支給されます。



(7)雇用保険の高年齢雇用継続給付を受給すると年金が停止されてしまいますか?

特別支給の老齢厚生年金を受給している場合、厚生年金保険の被保険者であり、雇用保険の高年齢継続給付(高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金)を受けると、在職老齢年金による支給停止に加えて雇用保険との調整により年金の一部が支給停止されます。
高年齢雇用継続給付とは60歳以降における賃金ダウンに対応するため、雇用保険の被保険者期間5年以上の60~64歳の被保険者のうち、賃金額が60歳到達時の賃金額の75%未満となった人に対して、最高で60歳以降の賃金額の15%を支給する制度(賃金額が339,560円以上の場合は不支給)です。この額は毎年8月1日に変更されます。

高年齢雇用継続給付

  高齢者雇用継続基本給付金 高年齢再就職給付金
対象者 雇用保険の基本手当を受給しないで継続雇用した人または再就職した人 雇用保険の基本手当を受給して60歳以後に所定給付日数を100日以上残して再就職した人
支給要件
(全てに該当していること)
  • ・60歳以降も雇用保険の被保険者であること
  • ・60歳時点で雇用保険の被保険者期間が通算して5年以上あること
  • ・60歳時の賃金と比較して60歳以後の賃金が75%未満に低下していること
  • ・60歳以後に安定した職業に再就職し、雇用保険の被保険者であること
  • ・60歳時点で雇用保険の被保険者期間が5年以上あり、基本手当の支給を受けたことがあること
  • ・再就職し、再就職前の賃金と比較して60歳以後の賃金が75%未満に低下していること
  • ・再就職日前日に基本手当の支給残日数が100日以上あること
支給額 継続勤務時の賃金の最高で15%支給 再就職先での賃金の最高で15%支給
支給期間 65歳に達する月
  • ・基本手当の支給残日数が100日~200日未満→再就職時より1年
  • ・基本手当の支給残日数が200日以上→再就職より2年

高年齢雇用継続給付を受給すると在職老齢年金の一部が支給停止(最大で標準報酬月額の6%)となります。

高年齢雇用継続給付の支給額

みなし賃金日額=(60歳到達時前6か月の賃金総額÷180)×30

※みなし賃金日額は60歳に到達するまでの6か月間に支払われた賃金の総額を
180で除した額(賃金日額)に30を乗じて得た額のことで、60歳到達時の賃金月額限度額は447,600円。この額は毎年8月1日に変更されます。

支給額:60歳以降の賃金額の15%相当額(賃金額が339,560円以上は不支給)を限度に60歳以降の賃金額の低下率に応じて、次のとおりになります。
低下率が61%未満の場合→60歳以降の賃金額×15%
低下率が61%~75%未満の場合→60歳以降の賃金額×低下率に応じて15%から逓減した率
低下率75%以上→不支給




(8)雇用保険の失業給付と年金は同時にもらえますか?

平成10年4月1日から特別支給の老齢厚生年金と雇用保険の基本手当は同時に受給できなくなりました。
特別支給の老齢厚生年金の受給権者が雇用保険の基本手当を受給する場合、基本手当が優先支給され、基本手当を受給している間は特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止になります(長期加入者の特例の場合は年金を受給した方がよいこともあります)。
なお、遺族年金または障害年金は基本手当との支給調整を行いません。
支給停止される期間はハローワークで求職の申込みを行った日の属する月の翌月から失業給付の受給期間が経過した日の属する月(または所定給付日数を受け終わった日の属する月)までになります。
なお、求職の申込みをした後で、基本手当を受けていない月がある場合、その月分の年金はすぐに支給されず、3か月程度後の支給となります。また、基本手当の受給期間経過後、年金の支払い開始は3か月程度後となります。

支給停止の基本的な仕組み

支給停止の基本的な仕組み


(9)年金を請求するための手続きは?

公的年金は、年金を受ける資格(受給要件に該当)ができたとき自動的に年金の支給が開始されるものではありません。
自分自身または代理人(委任状などが必要)が年金を受けるための手続き(年金請求)を必要な書類(年金手帳、戸籍謄本、住民票など)を揃えて行う必要があります。

50歳前

毎年誕生月に「ねんきん定期便」が届くので、年金加入期間を確認。


50歳以上

50歳以上は自分の年金加入記録に基づく年金見込額を調べましょう。


59歳誕生月

  • ・詳細な「ねんきん定期便」が届くので、記載内容をよく確認。
  • ・退職後も働く場合、雇用条件に応じた年金見込額を試算してもらいます。
  • ・配偶者の年金見込額も試算すれば、世帯の年金額が把握できます。

60歳の3カ月前

  • ・60歳時に特別支給の老齢厚生年金の受給権(年金を受け取る権利)が発生する人に対して、60歳に到達する3か月前に基礎年金番号、氏名、生年月日、住所および年金加入記録が印字された「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」が黄緑色の封筒に入って届きます。同封のリーフレットを参考に年金請求書を記入します。

60歳誕生日の前日

  • ・60歳誕生日の前日から年金請求手続きが可能。ただし、昭和28年4月2日以降の男性(女性は昭和33年4月2日以降)の支給開始年齢は61歳からになります。
  • ・年金請求書に必要書類を添えて、年金事務所あるいは街角の年金相談センターに提出します(持参または郵送)。
  • ・年金事務所、街角の年金相談センター、街角の年金相談オフィスの所在地
    http://www.nenkin.go.jp/n/www/section/index.html
  • ・必要書類は年金手帳、戸籍謄本(あるいは戸籍抄本)、世帯全員が記載された住民票、所得証明書、自分名義の金融機関の通帳、印鑑などです。必要書類は家族状況や加入していた年金の種類などで異なるため、事前に確認しておきましょう。

請求手続き後

  • ・請求後1~2か月ほどで年金証書が届き、年金証書が届いてから50日前後で初回の年金が振り込まれます。
  • ・年金は毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の偶数月に年6回に分けて、その月の15日にそれぞれ前2カ月分がまとめて支給されます。