1.年末調整を行う理由

年末調整を行う主な理由は次のとおりです。

  • (1)月々の給与を支払う際の源泉徴収税額表は、毎月の給与が年間を通して変動がないものとして、作成されています。
  • (2)年の中途で控除対象扶養親族の数に異動が生じても、異動後の支払い分から修正します(遡って、各月の源泉徴収税額を修正しません)。
  • (3)生命保険料や地震保険料の控除等は、年末調整の際に控除するとされています。

2.令和5年分の年末調整における留意事項等

 令和5年の年末調整の計算に当たっては、昨年の令和4年分から比べて大きな改正事項はありません。

※ 本年より、年末調整の税額計算等を簡単に行うことができる「年末調整計算シート」(Excel)が国税庁ホームページの「年末調整がよくわかるページ」(https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm)に掲載されています。

国税庁「令和5年分 年末調整のしかた」に記載している情報のほかにも、次の情報などが国税庁ホームページに掲載されていますので、そちらもご活用ください。

○ 源泉徴収義務者用情報

  • ・電子計算機等による年末調整
  • ・所得の種類・収入・必要経費の範囲等
  • ・令和5年分 年末調整チェック表
  • ・年末調整Q&A
  • ・ダイレクト納付の手続き

○ 給与所得者用情報

  • ・各種控除について(給与所得者用)
  • ・年末調整を受ける際の注意事項
  • ・各種申告書の記載例

○ 源泉所得税のキャッシュレスでの納付方法(源泉徴収義務者)
【掲載場所】https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index/gensen_nouzei/cashless.htm

年末調整手続の電子化で簡便化!

 従業員が給与の支払者に提出する控除申告書を電子データで作成し、給与の支払者に提供する場合は、保険料控除証明書等の書面(ハガキ等)での添付に代えて、保険会社等から交付を受けた控除証明書等のデータを添付することができます。
 年末調整手続を電子化することにより、給与の支払者においては、保険料控除等の控除額の検算や控除証明書等のチェックが不要となるなど、年末調整手続が簡便化されます。
 詳しくは、国税庁ホームページの「年末調整がよくわかるページ」
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm)をご覧ください。

3.年末調整の対象者と事務手順の概要

年末調整の対象者は、原則として給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人となります。

(注)本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人、年の途中で退職した人など一定の場合には、年末調整の対象外となります。


(1)「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの受理と内容の確認

年末調整に当たっては、提出された「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などに基づいて、各種の控除額を確定します。
なお、基礎控除の適用を受けるためには、「給与所得者の基礎控除申告書」を提出する必要があります。
ここでいう「給与所得者の基礎控除申告書」は、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の一部です

  • ① 令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • ② 令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書(②から④までの申告書は、3様式の兼用様式となっています。)
  • ③ 令和5年分 給与所得者の配偶者控除等申告書
  • ④ 令和5年分 所得金額調整控除申告書
  • ⑤ 令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書(保険会社等の控除証明書の添付)
  • ⑥ 令和5年分 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(次の証明書の添付)
  •  イ. 税務署長が発行した「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」
  •  ロ. 金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」

国税庁「令和5年分 年末調整のしかた」参照頁

6頁 1 年末調整の手順
7頁 2 各種控除額の確認
7頁 2-1 扶養控除等(異動)申告書の受理と内容の確認
14頁 2-2 基礎控除申告書、配偶者控除等申告書及び所得金額調整控除申告書の受理と内容の確認
18頁 2-3 保険料控除申告書の受理と内容の確認
26頁 2-4 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書の受理と内容の確認
51頁 令和5年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表

(2)所得控除と所得控除額の合計額の計算

給与の支払者は、給与所得に対する源泉徴収簿(給与台帳等)及び給与所得者から提出された(1)の各種申告書等に基づき、次の所得控除と所得控除額の合計額を計算します。
社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、基礎控除


(3)年末調整の対象となる給与と徴収税額の集計

  • ① 給与と徴収税額等の集計
    給与の支払者は、給与所得者ごとに本年分の毎月の給与と給与から徴収した税額を集計して、年末調整の対象となる給与の総額と徴収税額の合計額と、給与から差し引いた社会保険料及び小規模企業共済等掛金の額の各合計額を計算します。
  • ② 給与所得控除後の給与等の金額の計算
    上記①で計算した年末調整の対象となる給与総額について、「令和5年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」51頁以降に当てはめ、給与所得控除後の給与等(給与所得)の金額を求めます。
    本年分の給与の総額が660万円以上の人については、次の算式に従って計算します(1円未満切り捨て)。
  •  イ.給与等の金額が6,600,000円以上8,500,000円未満の場合
    給与等の金額 × 90% - 1,100,000円 = 給与所得控除後の給与等の金額
  •  ロ.給与等の金額が8,500,000円以上20,000,000円未満の場合
    給与等の金額 - 1,950,000円 = 給与所得控除後の給与等の金額
  •  ハ.給与等の金額が20,000,000円以上の場合
    18,050,000円(給与所得控除後の給与等の金額)

給与の収入金額が850万円以下及び③850万円超で特別障害者等に該当しない給与所得者は、上記算式で計算された金額が次の「③給与所得控除後の給与等の金額(調整控除後)」となります。
給与の収入金額が850万円超え、特別障害者に該当する人等の給与所得者は、次の「③給与所得控除後の給与等の金額(調整控除後)」となります。

  • ③ 給与所得控除後の給与等の金額(調整控除後)
    所得者(給与の収入金額が850万円を超える人)が、特別障害者に該当する場合又は年齢23歳未満の扶養親族、特別障害者である同一生計配偶者若しくは特別障害者である扶養親族を有する場合、次の算式により計算した金額が「給与所得控除後の給与等の金額(調整控除後)」となります。
  •  イ.所得金額調整控除額の計算(適用を受ける方は、「所得金額調整控除申告書」を提出します)
    なお、「所得金額調整控除申告書」は、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に含まれています。
    (給与の収入金額(注)- 850万円)×10%=所得金額調整控除額(15万円限度、1円未満切り上げ)

    (注)1,000万円を超える場合には、1,000万円。

  •  ロ.給与所得控除後の給与等の金額(調整控除後)
    給与所得控除後の給与等の金額 - 所得金額調整控除額(15万円限度)=給与所得控除後の給与等の金額(調整控除後)

(4)課税給与所得金額及び算出所得税額の計算

給与の支払者は、上記「(2)所得控除と所得控除額の合計額の計算」及び「(3)③給与所得控除後の給与等の金額(調整控除後)」に基づき、次の①課税給与所得金額と②算出所得税額を計算します。

  • ①  給与所得控除後の給与等の金額 (調整控除後)- 所得控除額の合計額 = 課税給与所得金額(1,000円未満切り捨て)
  • ②  課税給与所得金額(A) × 税率(B)- 控除額(C)= 算出所得税額

令和5年分の年末調整のための算出所得税額の速算表

課税給与所得金額(A) 税率(B) 控除額(C) 税額=(A)×(B)-(C)
1,950,000円以下
5% --- (A)× 5%
 1,950,000円超 ~ 3,300,000円〃
10% 97,500円 (A)× 10% - 97,500円
 3,300,000円〃 ~ 6,950,000円〃
20% 427,500円 (A)× 20% - 427,500円
 6,950,000円〃 ~ 9,000,000円〃
23% 636,000円 (A)× 23% - 636,000円
 9,000,000円〃 ~ 18,000,000円〃 33% 1,536,000円 (A)× 33% - 1,536,000円
18,000,000円〃 ~ 18,050,000円〃 40% 2,796,000円 (A)× 40% - 2,796,000円
    (注1)課税給与所得金額が1,000円未満の端数は切り捨てます。
    (注2)課税給与所得金額が18,050,000円を超える場合は、年末調整の対象となりません。

(5)年調所得税額の計算

上記「(4)②算出所得税額」について、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除」の適用の有無により、年調所得税額は、次のとおりとなります。

  • ①  (特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けない人
    上記「(4)②算出所得税額」が「年調所得税額」となります。
  • ②  (特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受ける人
    上記「(4)②算出所得税額」から「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額」を控除した金額が「年調所得税額」となります。
    ただし、上記「(4)②算出所得税額」より「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額」の方が多い場合、「年調所得税額」は0円として、控除しきれない部分の金額は切り捨てます。

(6)年調年税額の計算(復興特別所得税2.1%を含む)

上記「(5)年調所得税額」の金額に102.1%を乗じた金額が「復興特別所得税を含む年調年税額(100円未満切り捨て)」となります。


(7)過不足額の精算

上記「(6)年調年税額」と「(3)①給与と徴収税額等の集計」で1年間に源泉徴収された税額計とを比べて過不足額を求め、次の精算を行います。

  • ①  年調年税額 < 1年間に源泉徴収された税額計 → 超過額(税金を還付します)。
  • ②  年調年税額 > 1年間に源泉徴収された税額計 → 不足額(税金を納付します)。
  • (注)年末調整による過不足額の精算方法には、次の2つの方法があります。
  •  イ. 本年最後に支払う給与(賞与を含みます)についての税額計算を省略し、その給与に対する徴収税額はないものとして精算する方法。
  •  ロ. 本年最後に支払う給与についても、通常の月分の給与としての税額計算を行った上で精算する方法。

4.年末調整後に給与の追加払や扶養親族等の異動があった場合の再調整

年末調整が終わった後、本年中に本年分の給与の追加払いが生じた場合、子が結婚して控除対象扶養親族の数が減少した場合等、次の事由が生じたときは異動事項の申告を基にして年末調整のやり直しをすることができます。

  • (1)年末調整後に給与の追加払があった場合
  • (2)年末調整後に扶養親族等の数が異動した場合
  • (3)年末調整後に配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けた配偶者や受給者本人の所得の見積額に差額が生じた場合
  • (4)年末調整後に保険料を支払ったような場合
  • (5)年末調整後に住宅借入金等特別控除申告書の提出があった場合
  • (注)年末調整のやり直しができる期限は「給与所得の源泉徴収票」を受給者に交付することとなる翌年1月末日までとなります。

国税庁「令和5年分 年末調整のしかた」参照頁

45頁 年末調整後に給与の追加払や扶養親族等の異動があった場合の再調整

5.令和6年分の給与の源泉徴収事務

実務上の留意事項

(1)「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の受理

  • ①  給与の支払いを受ける人は、毎年最初に給与の支払いを受ける日の前日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を給与の支払者(2か所以上から給与の支払を受けている人は主たる給与の支払者)に提出しなければなりません。なお、給与所得者本人、源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族等のマイナンバー(個人番号)の記載をする必要がありますが、一定の要件の下、マイナンバー(個人番号)の記載を要しない場合があります。※
    ※一定の要件については、国税庁「令和5年分 年末調整のしかた」46頁を参照してください。
  • ②  給与の支払者は、「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の用紙をあらかじめ各人に配付しておき、その記載が終わったときは確実に回収します。
  • ③  給与の支払者は、申告書を受理した場合、その記載が正しく行われているかどうかを確かめた上、申告書に基づき、各人の源泉徴収簿の「扶養控除等の申告」欄に必要な記入を行い、また、源泉徴収簿の左肩の「甲欄」を○で囲みます。

(2)「従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書」の受理

  • ①  2か所以上から給与の支払を受けている人が、主たる給与(「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出先から受ける給与)からだけでは、配偶者(特別)控除、扶養控除、障害者控除等の全額が控除できないと見込まれる場合に限り、「令和6年分 従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書」を提出することができます。
  • ②  給与の支払者は、申告書を受理した場合、その記載が正しく行われているかどうかを確かめた上、申告書に基づき、各人の源泉徴収簿の「従たる給与から控除する源泉控除対象配偶者と控除対象扶養親族の合計数」欄に必要な記入を行い、また、源泉徴収簿の左肩の「乙欄」を○で囲みます。

(3)給与に対する源泉徴収税額の計算における扶養親族等の数

源泉徴収税額表の甲欄を使用して給与に対する源泉徴収税額を求める際、扶養親族等の数に応じて源泉徴収税額の計算を行いますが、この「扶養親族等の数」とは、源泉控除対象配偶者と控除対象扶養親族(老人扶養親族又は特定扶養親族を含みます。)との合計数をいいます(注1)。
また、給与の支払を受ける人が、障害者(特別障害者を含みます。)、寡婦、ひとり親又は勤労学生に該当する場合には、これらの一に該当するごとに扶養親族等の数に1人を加算し、その人の同一生計配偶者や扶養親族(年齢16歳未満の人を含みます。)のうちに障害者(特別障害者を含みます。)又は同居特別障害者に該当する人がいる場合には、これらの一に該当するごとに扶養親族等の数に1人を加算した数を扶養親族等の数とします。詳しくは、「源泉徴収税額表」を参照してください。

  • (注1)「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載がされていないものとされる源泉控除対象配偶者を除きます。
    『「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載がされていないものとされる源泉控除対象配偶者』とは、給与の支払を受ける人が提出した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に源泉控除対象配偶者である旨の記載がされた配偶者が、その給与の支払を受ける人を、その配偶者の提出した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等に記載された源泉控除対象配偶者として源泉徴収に関する規定の適用を受ける場合における配偶者をいいます。
    夫婦の双方がお互いに源泉徴収における源泉控除対象配偶者に係る配偶者(特別)控除の適用を受けることはできませんので、ご注意ください。
  • (注2)源泉控除対象配偶者、控除対象扶養親族、障害者(特別障害者を含みます。)又は同居特別障害者が国外居住親族である場合には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に親族関係書類が添付等された扶養親族等に限ります。

(4)非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用要件(令和5年分から改正)

  • ① 扶養控除の対象となる扶養親族(控除対象扶養親族)の範囲から、年齢30歳以上70歳未満の非居住者であって、次に掲げる者のいずれにも該当しないものは除外されます。
  •  イ. 留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者
  •  ロ. 障害者
  •  ハ. 扶養控除の適用を受けようとする人からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
  • ② 給与の源泉徴収税額の計算において、その扶養親族が年齢30歳以上70歳未満の非居住者であって、上記①イに掲げる者に該当するものとして扶養控除の適用を受けようとする人は、その旨を記載した「給与所得者扶養控除等(異動)申告書」を提出するとともに、現行の親族関係書類に加えて、その非居住者である扶養親族が上記①イに掲げる者に該当する旨を証する書類の提出等をしなければなりません。

年末調整に係る詳細

国税庁「令和5年分 年末調整のしかた」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2023/01.htm