世界から注目される上勝町

―いろどりの活動は、海外からも注目を集めていて、たくさんの海外の方々が視察に来られているようですね。先日は、幸福度世界一の国と言われてるブータンにも招かれたそうですが、日本の状況と比較して、何か感じられたことはありましたでしょうか。

昨年でだいたい37カ国ぐらいから上勝町に見に来られているのですが、これは非常に多いです。ほとんどが、地域の資源をどう活かしたらいいかということで勉強に来られるということです。 私自身、特に最近、直感的に見ているのは、外国の方々から見るといずれ日本と同じようになる。少子高齢化問題、それから過疎化問題といったことが自分の国にもいずれは来るぞということを感じ始めてきています。日本がずっと歩んできたことの中で、駄目になった要因はどこにあるか。そして、うまくいっているところはどこが違うのかということを見てみなければいけないという風が吹き始めてきています。それで上勝町は、高齢化だけれども元気だし、若い人もいま入り始めてきているところに非常に注目が集まっている。海外に来て、そのことを伝えてもらえないか。どのようにやってきたのか、どのようにそれができているのかということを伝えてほしいということが、ものすごくいま増えてきました。

そんな中で、ブータン国に来てくださいと言われ、ブータンを見て指導してもらえないかということでした。私にはそんな力はありませんということで、一度お断りをしていたのですが、実を言うと、すごく見てみたかったところがありました。
ブータンは世界一幸せな国だといわれています。私は日本一が上勝で、世界一はブータンだということをよく言うのですが、ブータンの幸せとは、経済的なことが成り立っていて幸せなのだろうか。その部分について、現場を見てみたいという気持ちがあったのです。
なぜかというと、いま上勝町には若い人がたくさん来るのです。昨年度も、1年半で約236名がうちの会社でインターンをやりました。ほとんどの若者が地域の中で役に立ちたい、認められるような仕事がしたいという価値観を持って集まってくる。地方に住む若者は、お金でない部分に価値観を持っているわけです。幸せがお金だけではないよという中で、自分の役割を見つけたいというところで来るのです。
それでブータンに行ってみたのです。ブータンでは、国民総幸福量(GNH)という独自の考え方を国家の指標として打ち出しています。この国民総幸福量というのは嫉妬心をコントロールして、やっかみや嫉妬心が起きないような国策を講じている。日本はいま全く逆で、何かすごく被害者意識とかいうようなことをメディアがどんどん取り上げています。そのため、一生懸命やっている人、正直者がばかを見るようなところまで来てしまっているところがあります。
ブータンの状況から見ると、やはり日本では経済活動がなければ駄目です。仕事があって経済活動がしっかりしている、それと地域に住み自分の役割がある、そして幸せがある。この3つがすごくバランスよくできることが、これからの世界の中でも一番求められる地方のあり方ではないか。これはどれが欠けても駄目で、すごくいいバランスが必要なのだと思います。

仕事と、地域と、幸せ。この3つがバランスよくつながっているということです。
ブータンも、私どもが行って説明をしたらぜひ見に来たいということで、10月の後半から10日間かけて上勝町を視察するということです。ブータンの内務省の一番トップ、それから県の知事が5県か6県ぐらい、市長や知事が見に来ます。視察は、特に地域づくり。それから、いろどり活動。そして「上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)行動」。ブータンは、特にごみ問題が大きい。残念だったのですが、あれだけ幸せな国であっても、ごみをどこにでも捨てる。町があまりきれいではないという点からすると、ごみ問題はこれからの大きな課題でしょうね。
上勝はごみを34に分別して、焼却施設がない。ごみ収集車がないというのは日本で上勝町だけですが、分別でやっています。日本のように大きな焼却場をつくり、どんどん燃やしてしまってというのではなく、リサイクルしていくこともブータンにとっては考えていくような取り組みもあると思います。
地域全体を見るということ、そこが上勝町の強みでもあるということです。例えば、何かの産業だけが優れているのは全国でもたくさんあります。広く地域全体で捉えるまとまりとか強さというのが、上勝町のいいところです。これが全国の中ではなかなか、そういうまとまり方をしているところは本当に少ないです。