求められるのは、リスク社会での対応力

―最後に、地震をはじめとして豪雨や竜巻など、多くの自然災害が近年発生していますが、こういうリスク社会においてどういう課題があるのか、お考えを聞かせていただけますか。

私は人の力というのは、本当に無限の力を持っているということをよく言うのですが、自分の力というか、高齢者もそうだし、若い人もそうだし、本当にその人の持っている力というのは発揮できていないのですね。何かの災害が起きるとか、何かが起きたときに、自分の持っている力、10の力が、いま日本で本当に1とか2とかしか発揮できていないです。それは価値観がこれだけ多様化してきたということもあるのですが、自分の力をどうやって引き出していき、役割ということをどれだけ自分が自分の中に持てるかです。
おばあちゃんがタブレットを使うということもそうで、普通考えたら絶対使えないよと思うけれども、私はこれをやりたい、私はこういうことが自分の中に持っているということが出てくると、あのタブレットを使える力が出てくるのです。いろいろな災害が起きたとき、それをマニュアル化してシミュレーションするのではなく、その一人ひとりの力をどれだけ引き出せるかということのほうが、すごいパワーになるというか、力になるでしょうね。

私はマニュアルというのが好きではないというと語弊がありますが、マニュアルというのはあまり必要ではなく、直観力というか、現場で起きたことを自分がどう判断してどう動くか、自分がどのような役割を果たすことができるのかということを判断できる力が必要だと考えています。一人ひとりがその力を持ち、それが100人、1,000人、1万人、10万人と集まることがどれだけ強いかと思います。みんなが集まってマニュアル化しようと言っても、いざ現場になったら、なにも動かないと思います。きつい言い方ですが、意外に絵に描いた餅になる。
例えば、ディズニーリゾートでの震災の対応ですが、それはお客様に対して自分の役割があり、ディズニーの社員がどういうことでお客さんが喜んでくれるか。どういうことが自分の現場で起きているのか、自分の判断力の中で、それを毎日考えてやっているのですね。だから、お客様が変化することに対し、自分の対応力を持っている。何かが起きたときも、これは同じなのです。やらされているとか、形だけの枠の中で動くと、形が変わったときに対応ができないのです。
これは企業すべてそうであり、店であれば店長がすごく大事、店員がすごく大事です。すなわち、プロデュースしている一人ひとりが変化に対して対応できる力を持っていると、どんな変わったことの中でもそれを応用できるという非常に強い形になるのです。

一番いけないのは、何度も言っているけれども、みんなが、国がしてくれる、県がしてくれるという中でじーっとしていたら、何か起きたとき、そのために悪循環になってしまいます。 映画『人生、いろどり』はまさにそれ。どんな人にも役割がある、もうヒトハナ咲かそうと女性達ががんばったのです。田舎って変化を嫌うんです。田舎が発展しないというのは、高齢者や女性は、何もしなくていいよ、じっとしていな、けがしたら困るよとかと一緒で、何もしないことがいいというか、変化を嫌う。映画の中で立ち向かっていくことから解決されていくことを物語ってくれています。

―ぜひ一人でも多くの方がこの映画を観て、明るい地域社会に向けた夢と希望とを持ってもらえればいいなと思います。ありがとうございました。

2012年10月2日 インタビュー