リーダーが活動できる地域の土台作りを

─お話を聞いていると、地区ごとのリーダーの果たした役割とか、行政で言えば市長さんのリーダーシップとか、非常時におけるリーダーの役割について印象深いお話を聞かせていただきました。そういうリーダーをさらに育成していくことで、復興が促進されると思いますが、リーダーを地域全体でどのようにサポートし、育成するか。その辺りについて先生のお考えはございますか。

何とかしたいという方はいらっしゃるのです。いらっしゃるけれど、どういう立場で、どういう場所で、自分の力を発揮することができるかということがわからない。そこに行政とか、あるいはほかの支援者がアイデアを出したり、資金を提供したりすることにより、潜在的にいる地域のリーダーの方に活動できる場所を提供する必要があると思います。

建築家の伊東豊雄さんとかが「みんなの家」をやっています。被災地で集まって話をしたり相談したりする場所がないから拠点を今つくっているのです。私は「記憶の庭」というものをつくりました。家だけをつくってもだめで、先ほどのいぐねとか庭とか、そういうものがセットにならないと農村地域のコミュニティの場になりません。今では、集落ががれきになってしまっているわけです。大きながれきは撤去しましたが、お茶わんのかけらとか、お風呂のタイルとか、小さながれきがたくさん落ちているので、それを集めてきて庭のモザイクみたいにしたり、海岸の津波で打ち上げられたおびただしい流木を活用したり。また、津波で壊滅した旧家の庭石も寄付していただきました。このようなものを集めて、心の寄り所としての「記憶の庭」が、誕生しました。

昨日、「みんなの家」と「記憶の庭」の棟上げ式だったのですが、棟梁が屋根に上ってお餅をまきますよね。紅白のお餅とか、五円玉みたいなお金を白い紙に包んでおひねりみたいにしてまくのですが、子どもたちが足の踏み場もないぐらいやってきました。私も子どものころ棟上げ式があると、今日はあそこの家の新築、棟上げ式よとか言われて行きましたが、やはりそういうコミュニティの行事は楽しいですよね。そういうものも含めて、皆さんが集まれる場所、そして気持ち。何かやりたいと言っている人たちが話し合ったりという場所だけではなく、仕組みをつくるようなお手伝いをする。具体的にはそういうことから始まるのではないかと思います。いきなりリーダー養成なんていうわけにはいかないと思います。