相談場所を癒しの空間に

―イギリスの「マギーズ・キャンサー・ケアリングセンター」を参考にした「暮らしの保健室」は、とてもあたたかみのある雰囲気ですが、どのような点を工夫して建設されたのでしょうか。


「平成24年度在宅医療連携拠点事 業成果報告
(株)ケアーズ白十字
訪問看護ステーション、暮らしの保健室」より

思いがけないきっかけでこの場所お借りしたときに、改修工事はマギーズセンターを意識して、人を癒す空間にする環境づくりのための内装にしました。なぜかと言いますと、日本の医療機関では診療報酬上、相談にあまりお金が付かないので、非常に片手間になり、外来の片隅にパーテーションを区切って、暗い閉じ込められた空間に机といすがあるだけという環境で、人々の不安な状態を聞くということがずっと行われてきました。ですから、相談支援をすると言ったら、たいていの皆さんは「小さな空間で、いすと机があればいいんでしょう」という感覚です。だから、思い切りよく改修して人々に見せないと、相談場所が人を癒す空間であるということを誰も信じてくれないと思ったのです。

イギリスの「マギーズ・キャンサー・ケアリングセンター」は、外側のデザインはある意味ちょっと奇抜というか結構なデザイン性があるのですが、中はどこも同じコンセプトでつくられていて、非常に落ち着いた様子です。メインテーブルがあって、オープンキッチンがあって、全体的に木を使っていて、イギリスの家庭的な家の中というような暖かい雰囲気です。

「暮らしの保健室」も同じようにメインテーブルがあって、オープンキッチンがあって、木を全体に使っていて、個室になれるけど、稼働式のパーテーションを使用しているので、広く、多機能に使えるようなスペースも設置しています。畳に竹のランプシェードという和風テイストの場所もつくりました。マギーズセンターとまったく同じではなくて、ここに合わせながら設計をしてくれとお願いしました。

やはり木を使っていると、気持ちがちょっと和らぎます。トイレも壁はヒノキ材です。ヒノキは高いイメージですが、端を使えばそれほど高くないということで、使用しました。ヒノキは香りも高いですし、殺菌まではいかないですけど、少しそういうような効果もあります。マギーズセンターでは1人で泣ける個室としてトイレをきちんとつくるというコンセプトです。

そうした意味で思い切って改修してみて、多くの方がここへ来て相談支援をするというか、人に話を聞いてもらうだけで、自分で自分のことを考えられる力を取り戻して帰るということができているので、思い切って改装してよかったなと思います。

相談支援は年齢制限を設けていませんので、近所の高齢者の方から赤ちゃん連れのお母さんまで、多くの方が訪れる空間になりました。6割方は医療相談です。ご本人にとってこれは介護、これは医療、これは障がい、などの区別は難しく、どこの窓口に行けばいいかみんなわからない。わからなくてもいい状態でここに来てもらって、ある意味ワンストップのような機能として相談にのり、その先の案内をするというふうにしています。