企業との連携による新たなマーケット対策

―外部からビジネスを誘致しながら地域おこしに協力してもらう、そしてお互いにwin-winの関係をつくっていこうということがうかがえるわけですが、そういうことを考えるときの先生の視点をお聞かせいただけますか。

時々企業のトップの方から、何をつくったらいいか教えてくれと訊かれます。高齢者が3分の1になる社会には大きな市場がある。しかし、何をつくってよいかよく分からない。日本に限らず、世界的にも多くの企業が模索しています。
というのは、先ほど申しましたように高齢者は多様なので、マーケットが見えにくいのです。例えば、2歳児用の優れた靴をつくれば、2歳児全員が対象になります。しかし、70歳用の靴はありません。マラソンをしている人もいるし、ようやくお手洗いに這っていける人もいる。非常に多様なので、マーケットが明確に見えない。しかし、人口の3分の1という市場になると、小さいセグメントを取ってもマーケットになるのですが、その切り方が分からない。そういうところで戸惑っているのが現状ではないかと思います。

産業界は、高齢者の医療・介護には大きなマーケットがあると考え、この分野の開発はずいぶん進んでいます。もう1つは富裕層。非常にお金を持っている人たちのニーズを開拓することは今までやってきました。しかし、お年寄りの生活を見ていて思うのは、そういうものを消費する人たちは両方とも1割ぐらいであり、残りの8割は普通の生活をして年を取る人たちなのです。この8割の人たちは非常に大きなマーケットですが、それが見えていないのではないかと思っています。

特に、これから75歳以上の人が2割を占める社会が到来します。そういう年代の方が口をそろえておっしゃるのは、今の生活を来年も3年後も、できれば10年後も続けたいということです。身体が弱っても今の日常生活がずっと続いたらいい、今の楽しみが続けられる、今の活動が続けられることが望みなのです。その望みを叶えるためには企業は何ができるか考えてみるとよいでしょう。