地域包括ケアの今後
―秋山さんから見て、日本の地域包括ケアは今後どのようにしていくべきでしょうか。お考えをお聞かせください。
大きな課題でなかなか答えにくいですけれども、今までは介護保険も含めて、さまざまな制度がどんどん変わり、仕組みが少しずつ変わってきました。より複雑で逆に見えにくくなってきているけれども、そこを改めて見直して、地域に根差した、医療も介護も一体的に提供できるような地域ケアが進むということなのです。一方で、受け手側の住民も超高齢化社会で、今までは何かしてもらうだけの人でしたが、そうではなくて、地域の人々と一緒になって、お互いに予防も含めて医療にできるだけかからない。介護もできるだけ少なくてすむ。つまり重装備化や重度化しない形で最後は同じ地域で人生が終えられるような仕組みを地域の中でつくっていく方向が、地域包括ケアの究極の姿かなと思っているところです。
例えば、ご主人を見送って一人になった奥さんを、それからずっとフォローして、13年とか14年というスパンで看護も介護も入りながら地域のみんなで見送る。最後は重装備ではないんですよ。非常に穏やかに安らかに亡くなっていって、「家で亡くなってよかったね」という言葉をたくさん聞きます。そうした看取りは田舎でなければできないでしょうと言われがちですが、都会の真ん中でもそういうことを積み上げていけば、町が変わっていくというか、病院へのかかり方も変わっていくと思います。早めに相談を受けて、どうしていったらいいかを少しずつ組み立てて、最終的には家で亡くなることができる。そういうことで地域が変わっていくかなと思います。ちょっと理想論に近いかもしれませんけれども、活動をしていて手応えはすごくあります。
しかし医療の面で病院と在宅を結ぶ連携は、なかなか難しいのが現状です。介護との連携だけではなく、病院と地域をつないでいかなければいけないので、「暮らしの保健室」のように連携拠点のようなところは、地域包括ケアの中ではとても大事だと思います。
また、そのような地域をつくっていくためには、住民の参画が重要です。私は2007年から市民講座をおこなっていますが、企画は私たちがしても、いちばんのメイン講座は自宅で看取りをされたご家族に話をしていただきます。もちろんそこに関わった医師や看護師、ときにはケアマネジャーさんだったり、ときにはショートステイ先の相談員さんだったり、組み合わせはいろいろ変えます。そうして、住民自らも参画していくという当事者も巻き込んだプログラムが組まれていく地域になっていけたらなと思っています。同じように、全国各地のさまざまな市民講座に呼ばれたときには、企画の第1部は私の講義でもいいのですが、できれば第2部は地元で看取った人たちのグループや在宅をやっている人の体験談が出るような形での組み合わせにしてもらいたいということもたくさん言っていて、その企画がけっこううまくいっているんですね。そうすると、決して外から来た人が理想論だけ言うのではなくて、地元でもこういう動きがあるんだ、私たちもやれるんじゃないか、ぜひやりたいという機運になっていく。次は私を呼ばなくてもその地域でやっていけるという種をまいています。東京から人を呼んで話を聞いたというだけで終わらない。そういう地域づくりが、これからは重要だと思っています。
それから、地域の中で、できたら地域密着型、本当に小規模多機能というところで、病院にすぐ送らずに看ていけるようなものが必要なので、複合型サービスという2012年に生まれた訪問看護ステーションが行う小規模多機能型の仕組みにこれからチャレンジをして、地域包括ケアの中で訪問看護が多機能に果たすところに挑戦をしていこうかなと思っているところです。
―どうもありがとうございました。