地域をプロデュースする

―それは横石さんのようなリーダーがいらっしゃってできたことが、非常に大きなウエイトがあると思います。
ただ、第2、第3の横石さんが全国各地にいるかというとなかなかいない状況もまた一方であると思うのですが、そういう中でどのように、プロデューサーを育成しながら、かつ地域再生を進めていくことを目指していくのか。また、そのためにはどういうことが求められているのでしょうか?

昨年、インターンで236人が来て、26名が町内に残ったのですが、この傾向を見てみると、236人の人たちほとんどが、地域の中で役に立ちたい、認められるような仕事がしたいと思って上勝町に来ました。私が若いときは考えたこともなかったのですが、そういう感覚を非常に強く持っているのです。
でも、私が半分ぐらい期待していたのは、地域で起業をしてもらいたい、地域でビジネスを起こしてもらいたい、新しい何かを生み出すようなことをやってもらいたいと思っていたんです。ただ、これをやった人、その目的を持ってきた人が、何と1%しかいないのです。せいぜい2~3人です。リスクを背負って自分がそのことをやり通す。それが地域のことになるということを思わないのです。
一番難しいのは、では、そのためのお金はどこから出るの、誰が払うのといったときに、経済的な部分がしっかりとした仕組みをつくり、そこに対価を与えるということをやっていかなければいけないと私は思っています。このバランスが非常に悪いというか、できていないということが大きな課題です。

では、地域の中でそういう若者が来ることによって何が変わったかといったら、地域のコミュニティがよくなってきた。お祭りがどんどん盛んになってくる。ボランティア活動がどんどんできてくる。これは私が思っていた以上に地域がすごく元気になってくるのです。それから、高齢者と若者、おじいちゃん、おばあちゃんと二十歳代がくっつくと、ものすごく両方が引き合うのです。孫世代とおじいさん、おばあさんという関係は合っているわけで、すごく引き合い、すごい力を発揮していく形になるのです。
地域と都会では求められるリーダーが異なり、都会というのはそこに役割分担がちゃんとできているわけであり、地域コミュニティを作り上げる人の役割と、地域のことにはあまり関わらないのだけれども、事業をしっかりする人の役割がそれぞれある。地域では両方をこなせるリーダーが必要だが、1人のリーダーでこなすのは非常に難しい。だから、それぞれの役割をくっつけてやることをつくらなければ、両方をこなす形は現実的には難しい。
地域のことをほったらかして事業だけをやる人に対して地域は応援しないんです。応援してくれる形をつくらなければ地域というのはうまくいかなくて、逆に足を引っ張る形になってしまうところがリーダーの難しさでもある。

ハブとスポークというのですが、いくつか複数のスポークが、太くなってくると自転車のように回り始めるということであり、最初は一人なのです。最初は一人だけれども、その一人がある程度の軸を決めていくまでは頑張っていく。でも、そこからは役割という部分をしっかりと見つけて、他の人にその役割を担ってもらう形になれば一番いいのです。
先ほど言ったように、なぜうまくいかないかというのは、その最初の段階は同じなのです。一人の人間がやっていくと、その途中の段階でそれぞれの役割にならずに浮いてしまい、スポークにならないですね。軸がつながっていないんです。浮いてしまっているから空回り、自転車の輪が絡み回って、くるくるくるくる。前を向いて走らずに、その場で止まって、くるくると回っているのですね。これが現実です。
一人のできる力というのは本当に限られています。だから、あなたはこういう役割だよとか、あなたはこういうことだねということを、しっかりと認識し合うことができるかが重要です。日本の武将でもそうでしょう。日本をつくってきた昔の武将は一人の人ではないですね。必ずサブがいて、知恵者がいるとか、お金の金庫番がいるとかいうふうなことがあり、勝ち上がってきたのが、まさにそれを物語っていると思います。