【映画】人生、ここにあり!

「人生、ここにあり!」

  • 原題:Si Puo Fare
  • 製作年:2008年
  • 製作国:イタリア
  • 配給:エスパース・サロウ
  • 上映時間:111分
  • 監督:ジュリオ・マンフレドニア
  • 出演:クラウディオ・ジビオ
  • アニータ・カブリオーリ
  • アンドレア・ボスカ
  • ジョバンニ・カルカーニョ
  • ミケーレ・デ・ビルジリオ


映画紹介


イタリアの実話にもとづく社会的協同組合の奇跡のストーリー


この映画のイタリア原題は「SI PUO FARE(シ プオ ファーレ)」(やれば、できるさ)である。なんともイタリアらしいポジィティブな響きのあるタイトルである。しかも、この映画は実話を元にしているからすごい。
心の均衡が崩れ、不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などの症状で精神病院に入院していた患者たちが社会で自立し、会社を立ち上げていくまでを描いた人間ドラマである。
1978年にイタリアで制定された「バザーリア法」により、精神病院は閉鎖され、患者たちは社会に送り出されることとなる。そんな彼らが一人のリーダーにより、立派に自立しようと頑張る姿に思わずエールを送りたくなる。この映画の中で、ある職業の女性たちに乗り合いバスで会いにいく場面があるが、行きは緊張感漂う様子の彼らが、帰りのバスでは生き生きとした表情に変わっているところが印象的である。
殺伐とした現代社会において、“助け合い”の精神に一筋の光を見出した社会的協同組合の心温まる物語である。


1983年、正義感の強いミラノの労働組合員ネッロ(クラウディオ・ビジオ)は、労働組合のために出した本が型破りだとされ、所属していた組合から異動を命じられる。その異動先が「協同組合180」という「バザーリア法」によって閉鎖された精神病院の元患者たちによる協同組合だった。精神病院を閉じ患者たちを地域に戻し、一般社会で暮らせるようにするという「バザーリア法」が1978年に制定された。ところが、彼らは病院を出て自由な社会生活を送るどころか、病院内で封筒の切手貼りなどの単純労働をし、これまでと変わらず投薬を受けながら毎日を無気力に過ごしていた。
持ち前の熱血ぶりを発揮せずにいられないネッロは彼らに、無気力な生活ではなく、自ら働いてお金を稼ぐことを持ち掛ける。みんなを集めて会議を開くが、会議はなかなかまとまらない。すぐに手が出るキレやすい男、妄想癖の女、話すことが全て嘘の虚言癖の男など、個性豊かな組合員たちはバラバラで一筋縄ではいかない。


しかし、何とか寄木細工の床貼りの仕事をすることが決まる。
ネッロは彼らとともにこの無謀とも言える挑戦を始める。ところが、精神病院の元患者たちに自分の家の床貼りを依頼する人はなかなかいない。そのうえ数少ない現場でも、組合員たちは次々に失敗を繰り返す。そんなある日、仕事現場でのアクシデントをきっかけに、彼らの人生が大きく変わるチャンスが訪れる。
これまで止まっていた時間が確実に動き出し、社会の中で自信と誇りを取り戻し新たな人生に挑戦していく組合員たちの姿がなんとも頼もしい。薬の過剰投与で無気力だった彼らが、人生の喜びともいえる仕事、家庭、愛、性に目覚めていく。生きることのすばらしさを、あらためて考えさせられる作品である。


この映画は、2008年にイタリア本国で公開され、日本では、イタリア統一150周年にあたる2011年に劇場公開された。約1年かけて行われたオーディションにより選ばれた役者陣だけあって、リアルな演技、感情表現には目を見張るものがある。
この映画のモデルとなったのは、北イタリアのトリエステに位置する「ノンチェッロ協同組合」。
世界でも一番早くバリアフリーな地域作りに取り組み、約600人の組合員を数えるイタリア最大の社会的協同組合の一つである。現在も、障害を抱えた人々が経営する多数のホテルや企業が存在し、日本からも精神医療・精神保健の分野における海外研修先にもなっている。


「SI PUO FARE」(やれば、できるさ)。 この言葉を心に留め、私たちも彼らのように、常に自信と誇りを持って明日への一歩を踏み出していきたいものである。


(M.T.)