雇用保険「就職促進給付」、「教育訓練給付」、「雇用継続給付」
雇用保険の失業等給付には図表のように「求職者給付」、「就職促進給付」、「教育訓練給付」、「雇用継続給付」があります。
ここでは代表的な「就職促進給付」、「教育訓練給付」、「雇用継続給付」について解説していきます。
特定一般教育訓練給付金 | |
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利用対象者 |
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支給額 |
受講費用の40%で、上限額が20万円 (4,000円を超えない場合は支給なし) |
対象となる 指定講座等 |
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Ⅰ 就職促進給付
就職促進給付とは、早期再就職を促進することを目的とし、「再就職手当」、「就業促進定着手当」、「就業手当」などが支給されます。
「再就職手当」は、基本手当の受給資格がある人が安定した職業に就いた場合(たとえば、雇用保険の被保険者となる場合など)に基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給されます。
支給額は所定給付日数の支給残日数×給付率×基本手当日額(上限あり)で、
給付率については次のとおりです。
① 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の人
所定給付日数の支給残日数 × 70%×
基本手当日額(※ 一定の上限あり)
② 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の人
所定給付日数の支給残日数 × 60% ×
基本手当日額(※3 一定の上限あり)
- ※ 基本手当日額の上限は6,290円(60歳以上65歳未満は5,085円)で、毎年8月1日以降に変更されることがあります)
Ⅱ 教育訓練給付
雇用保険には働く人のキャリアアップを支援する制度として、「教育訓練給付制度」があります。
この制度は厚生労働大臣の指定する講座を受講し、修了すると本人が支払った受講料の一部が払い戻されるというものです。
教育訓練給付制度には「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」、「特定一般教育訓練給付金」があります(下図参照)。
専門実践教育訓練給付金は一般教育訓練給付金と比べてみると、より専門性の高い資格や分野にチャレンジしたい人向けになっています。なお、特定一般教育訓練給付金は、令和元年10月に新設されました。速やかな再就職と早期のキャリア形成を支援し、雇用の安定と促進を図ることを目的としています。
教育訓練給付制度
一般教育訓練給付金 | 専門実践教育訓練給付金 | |
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利用対象者 |
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支給額 | 受講費用の20%で、上限額が10万円 (4,000円を超えない場合は支給なし) |
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対象となる 指定講座等 |
基本情報技術者、簿記検定、ファイナンシャルプランナー、税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、TOEIC、看護師、社会福祉士、小型移動式クレーン技能講習 、建築士、気象予報士など |
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(注)専門実践教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金は、講座の受講開始1か月前までに、訓練前キャリアコンサルティングを受ける必要があります。
Ⅲ 雇用継続給付
雇用継続給付には「高年齢雇用継続給付」、「育児休業給付」、「介護休業給付」があります。
(1) 高年齢雇用継続給付
60歳到達時等の時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の一般被保険者に支給される給付です。
「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類があります。
高齢者雇用継続基本給付金 | 高年齢再就職給付金 | |
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対象者 | 雇用保険の基本手当を受給しないで継続雇用した人あるいは再就職した人 | 雇用保険の基本手当を受給して60歳以後に所定給付日数を100日以上残して再就職した人 |
支給要件 |
次の①~③のすべてに該当していること
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次の①~④のすべてに該当していること
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支給額 | 継続勤務時の賃金の最高で15%が支給される (各月の賃金が370,452円を超える場合は支給されない) |
再就職先での賃金の最高で15%が支給される (各月の賃金が370,452円を超える場合は支給されない) |
支給期間 | 65歳に達する月 |
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(2) 育児休業給付
労働者が育児休業を取得しやすくし、その後の職場復帰を援助、促進することで、職業生活の継続を支援する制度です。
満1歳未満の子どもを養育するため育児休業を取得した場合に、育児休業期間中の各支給単位期間(休業開始日から起算して1か月ごとの期間をいう)について育児休業給付金が支給されます。
育児休業給付金 | |
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対象者 |
【有期雇用労働者の場合】
(注)パパママ育休プラス制度(父母ともに育児休業を取得する場合の育児休業取得可能期間の延長)」を利用する場合は、育児休業の対象となる子の年齢が原則1歳2か月まで。ただし、育児休業が取得できる期間(女性の場合は生年月日以降の産後休業期間を含む)は1年間 |
支給要件 |
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支給額 |
休業開始時賃金日額×支給日数の67% ※休業期間中の賃金が80%以上支払われている場合は給付金の支給なし
※育児休業給付金の上限額は下記のとおり |
支給期間 |
産後休業(8週間)明けの日から最長で子の1歳の誕生日の前々日まで(男性の場合は出産日以降が対象) ただし、1歳到達(パパ・ママ育休プラス制度対象者は1歳2か月到達まで)の時点で以下のいずれかの理由がある場合は、最大で1歳6か月の前日まで延長可
平成29年10月1日より、保育所等における保育の実施が行われないなどの以下のいずれかに該当する理由により、子が1歳6か月に達する日後の期間に育児休業を取得する場合は、その子が2歳に達する日前までの期間、育児休業給付金の支給対象となります。
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(3) 介護休業給付
介護休業給付金 | |
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対象者 |
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支給要件 |
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支給額 |
休業開始時賃金日額×支給日数の67% ※休業期間中の賃金が80%以上支払われている場合は給付金の支給なし ※介護休業給付金の上限額は下記のとおり |
支給期間 |
支給対象となる介護休業(平成29年1月1日以降に介護休業を取得する場合)
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最近の雇用保険法改正
●マルチジョブホルダー制度(高年齢被保険者の特例)【令和4年1月1日から】
雇用保険法改正により、65歳以上の労働者を対象にした「雇用保険マルチジョブホルダー制度(高年齢被保険者の特例)」が創設されました。
雇用保険は、原則として、主たる事業所での労働条件が1週間の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み等の要件を満たす場合に適用されます。
マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で雇用される65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での労働時間を合計して次の①~③のすべての要件を満たす場合に、本人がハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができるというものです。
【適用要件】
- ①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
- ②2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)
の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること - ③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日であること
●産後パパ育休制度(出生時育児休業)【令和4年10月1日から】
「産後パパ育休(出生時育児休業)」とは、従来の育児休業とは別に、パパ(男性)が子の出生日から8週間以内に4週間の育児休業を取得できる制度です。
産後パパ育休制度は、おもに次の①~③がポイントになります。
- ①取得の申請期限
従来の制度は、育休取得の申請期限が1か月前でしたが、産後パパ育休は、原則として2週間前までに申し出ることで、取得することができます。 - ②分割して取得可能
初めにまとめて申し出ることで、2回に分割して取得できるようになりました。 - ③休業中も一定量働いてOK
従来の制度では、原則就業することができませんでしたが、産後パパ育休では労使協定を締結している場合に限り、休業中に就業することができるようになりました。
なお、「パパ休暇」は、産後パパ育休制度の創設に伴い廃止されます。
【令和4年10月1日からの育児休業制度について】
出典元:厚生労働省ホームページ
育児休業制度(現行)と記載されていますが、これは、改正前の令和4年9月30日までの育児休業制度のことです。