【映画】映画 日本国憲法

「映画 日本国憲法」

  • 製作年:2005年
  • 製作国:日本
  • 企画・制作:シグロ
  • 上映時間:78分
  • 監督:ジャン・ユンカーマン


映画紹介


日本国憲法を世界の視点から考える


「映画 日本国憲法」は自衛隊のイラク派兵をきっかけに、憲法9条の解釈をめぐって議論が高まった2005年につくられた。そして昨年末の政権交代を機に、再び憲法改正問題が注目されていることから緊急上映となった。
この映画は、「憲法とは誰のものか」、「9条に示される戦争放棄をどう考えるのか」、また「憲法制定までの経緯について」、世界の著名人が語ったインタビュー集で構成されている。監督は、「老人と海」(1990)、「チョムスキー9・11」(2002)のジャン・ユンカーマン氏である。


インタビューには、「敗北を抱きしめて」で日本の戦後史を描いたジョン・ダワー氏や日本人では社会学者の日高六郎氏などアメリカ、アジア、ヨーロッパ、中東など十数名の人々が、日本国憲法について語っている。
なかでもおもしろいのは日本国憲法の草案づくりに携わった、当時GHQ民政局のスタッフであったベアテ・シロタ・ゴードンさんの話である。戦後、日本国政府は「憲法問題調査委員会」をつくり、独自の憲法草案をGHQ(連合国軍総司令部)に提出している。しかし提出された憲法草案は立憲君主主義の考えが色濃く残っており、これでは日本の民主化は進まないと判断したマッカーサー(連合国軍最高司令官)は、スタッフを集め一週間でつくるよう命じる。そのスタッフのひとりがベアテさんである。ベアテさんは女性の権利や福祉の権利を憲法に反映するために努力する。映画のなかでは元気にインタビューに応じていたベアテさんは、2012年12月89歳で亡くなった。憲法草案づくりに携わった歴史の証人を失ったことは残念である。
日本国憲法がつくられた経緯については、「自主憲法」草案の顛末など詳しく語った日高六郎氏の話が興味深く、現憲法が一方的にアメリカに押しつけられたと断定することには疑問が生じる。


現在のわが国に目を転じてみると、憲法改正に関するメディアの世論調査をみても、質問の仕方如何で賛否の数字が異なっており、国民の真意がよくわからないといってよい。また、「改憲」だ「護憲」だとマスコミで騒がれているほど、国民的関心が高まっているとも思えない。
憲法は国の理念や規範を定めたものである。また、憲法は国家権力が国民を拘束するためのものでなく、国家の権力を抑止するためのものであり、主権は国民にあるという主権在民の考えが根本にある。
憲法改正問題が浮上してきている現在、時代の<空気>に左右されることなく、「主権在民」の一人として、憲法をどうするのか、どういう国が理想なのかを考えることが大切である。
そのためにもあらためて憲法の全文に目を通したり、煙たがられることを覚悟のうえで家族や友人と論じてみたりと、疎遠だったかも知れない憲法を自分の問題として捉えてみることが必要である。
また国内だけではなく日本の憲法が世界からどう見られているのかを知ることも多角的に考えるうえでは参考になる。そういう意味からも、世界の著名人が日本の憲法をどうみているのかを知ることができるこの映画は、私たちに大いに示唆を与えてくれるはずである。



(S.H.)