(1)後期高齢者医療制度とは?

平成18年6月21日に公布された「健康保険法等の一部を改正する法律」により、「老人保健法」が「高齢者の医療の確保に関する法律」(平成20年4月1日施行)と全面的に改正されました。
この改正により、平成20年4月1日から、75歳以上の人および一定の障害があり、申請により認定を受けた65歳以上75歳未満の人に係る医療については、財政基盤の安定化を図るという観点から、それまでの医療保険から独立した「後期高齢者医療制度(別名:長寿医療制度)」として導入されました。
運営主体は「老人保健制度」が市区町村単位でしたが、「後期高齢者医療制度」は都道府県単位(広域連合)が行っています。 また、後期高齢者医療制度では一人一人が被保険者になるため、「被扶養者」という考え方はなく、被保険者全員が保険料を負担します(保険料軽減特例あり)。

従来の老人保健制度と後期高齢者医療制度の違い

老人保健制度
(平成20年3月31日廃止)
後期高齢者医療制度
(平成20年4月1日スタート)
運営主体 市区町村
  • ・都道府県ごとにすべての市区町村が加入する「後期高齢者医療広域連合」
  • ・各種届出や保険料の徴収などは市区町村が窓口
対象者
  • ・75歳以上の人

  • ・65歳以上75歳未満で一定の障害があり、申請により認定を受けた人
同左
保険料
  • ・加入している公的医療保険の保険者に各自が納付
  • ・健康保険などの被扶養者は保険料負担なし
  • ・都道府県の広域連合ごとに定められた保険料を納付
  • ・原則公的年金から保険料を天引き
  • ・健康保険などの被扶養者だった人も保険料を負担
  • ・保険料の軽減制度あり
医療機関に
かかるとき
加入する医療保険から交付される「被保険者証」と、市区町村から交付される「老人医療受給者証」の2つを窓口で提示 広域連合から被保険者一人一人に交付される「被保険者証」を窓口で提示
医療機関窓口での
負担割合
  • ・1割負担
  • ・現役並み所得者は3割負担(注)
同左

(注)現役並み所得者とは、市町村民税の課税所得が145万円以上かつ、年収が夫婦2人世帯で520万円以上、単身世帯は383万円以上である場合をいいます。

(2)後期高齢者医療制度の対象者はどのような人ですか?

次の①または②のいずれかに該当する人は、それまで加入していた医療保険(国民健康保険、健康保険組合、全国健康保険協会、共済組合など)から脱退し、後期高齢者医療制度の被保険者となります。

①75歳以上の人
75歳の誕生日当日から加入します。
特に、本人が加入手続きをする必要はありません。


②65歳以上75歳未満で一定の障害のある人(注)
本人が申請し、広域連合の認定を受けた場合、認定日から後期高齢者医療制度に加入することができます。
加入申請の手続きは、住所地の市区町村の窓口になります。
ただし、加入している医療保険(国民健康保険、健康保険組合、全国健康保険協会、共済組合など)から後期高齢者医療制度に移行することにより、医療機関で支払う医療費の一部負担金や保険料などが変更になることがあります。
申請にあたっては加入している医療保険の相談窓口や住所地の市区町村役場の担当窓口にお問い合わせください。
なお、1度認定を受けた人でも、75歳になるまではいつでも将来に向かって、障害認定を撤回し、国民健康保険、健康保険組合、全国健康保険協会、共済組合などの医療保険に移ることができます。


(注)一定の障害のある人とは下記の人をいいます。
(ア)身体障害者手帳 1級、2級、3級
(イ)身体障害者手帳 4級の下肢障害の1号、3号、4号
(ウ)身体障害者手帳 4級の音声・言語障害
(エ)療育(愛護)手帳 A判定(1度・2度)
(オ)精神障害者保健福祉手帳 1級・2級
(カ)障害年金 1級・2級

※上記の手帳などの交付を受けることができない場合で、上記と同程度の障害がある人は市区町村役場の窓口で確認して下さい。

(3)後期高齢者医療制度の保険料は都道府県によって違うのですか?

①保険料の仕組み
後期高齢者医療制度においては、被保険者一人一人に対して、保険料が賦課されます。
後期高齢者医療制度における保険料は、都道府県の広域連合ごとに制定することになりますので、同一都道府県内では一律の保険料が基本となっています。
ただし、一定の事情がある場合には、特例により、同一都道府県内であっても市区町村ごとに不均一な保険料の設定も認められます。
保険料は、被保険者全員が等しく負担する「均等割額」と、被保険者の所得に応じて負担する「所得割額」の合計額になります。
所得割額の計算式は『(被保険者の前年中の総所得金額 − 基礎控除額43万円)× 所得割率』です。
なお、均等割額および所得割額は広域連合ごとにそれぞれの都道府県の医療の給付に応じて、2年ごとに条例で決定します。
令和4年度~5年度の全国平均保険料率は均等割額が年額47,777円、所得割率が9.34%です。
なお、保険料には年間上限額が定められており、現在の上限額は66万円です。

②保険料の計算事例

【例】東京都の保険料:均等割額は46,400円、所得割額9.49%
東京都在住の単身者で78歳、公的年金等収入220万円の場合

●年金収入の人の場合の所得割額について
所得割額 =(公的年金等収入 - 公的年金等控除額 - 基礎控除額[43万円])× 9.49%

※公的年金等控除額は収入金額に応じて定められており、収入金額が330万円未満の場合は110万円になります。

均等割額=37,120円(均等割額の軽減適用2割→46,400円×(1-0.2)※)…(ア)
所得割額=(公的年金等収入220万円 - 公的年金等控除額110万円 - 基礎控除額43万円)× 9.49% = 63,583円 …(イ)
保険料=(ア)46,400円×均等割額軽減割合(1-0.2)※円+(イ)63,583円=100,703円→(年額)100,700円 ※100円未満切捨て

※所得の低い人に対する均等割額(軽減割合2割、5割、7割)の軽減措置があります。なお、東京都後期高齢者医療広域連合の場合、所得割額の軽減措置があります。東京都以外については、各道府県後期高齢者医療広域連合のホームページ等でご確認ください。

(4)後期高齢者医療制度の保険料の軽減措置とは何ですか?

後期高齢者医療制度の保険料については広域連合ごとに条例で定めていますが、所得水準に応じた軽減措置が設けられています。

①所得の低い世帯の人の軽減措置

(ア)均等割額の軽減
均等割額の軽減は同じ世帯の後期高齢者医療制度の被保険者全員と世帯主の「総所得金額等を合計した額」をもとに軽減します。

軽減後均等割額(大阪府後期高齢者医療のケース)

下記の表の「軽減後均等割額」の例は大阪府のケースを掲載していますので、詳細につきましては住所地の市区町村役場の担当窓口にお問い合わせ下さい。

①均等割額の軽減
 世帯内の所得水準に応じて保険料の均等割額(54,461円)が次表のとおり軽減されます。

所得の判定区分
(同一世帯内の被保険者と世帯主の総所得金額の合計額)
均等割額の
軽減割合
令和5年度の軽減後の
均等割額(年額)
【基礎控除額(43万円)
+10万円×(給与所得者等の数-1)
を超えないとき
7割 16,338円
【基礎控除額(43万円)+29万円×(被保険者数)
+10万円×(給与所得者等の数-1)
を超えないとき
5割 27,230円
【基礎控除額(43万円)+53万5千円×(被保険者数)
+10万円×(給与所得者等の数-1)
を超えないとき
2割 43,568円

(※)波線部は同一世帯内の被保険者と世帯主に給与所得者等(次の(1)~(3)のいずれかに該当する人)が2人以上いる場合に計算します。

  • (1)給与収入額が55万円を超える人
  • (2)65歳未満かつ公的年金等収入金額が60万円を超える人
  • (3)65歳以上かつ公的年金等収入金額が125万円を超える人
  • ※軽減の判定は、4月1日(4月2日以降に加入した場合は加入日)の世帯状況で行います。
    判定日の後に世帯状況に異動があった場合でも、年度途中の再判定は行いません。
  • ※軽減判定するときの総所得金額等には、専従者控除、譲渡所得の特別控除に係る部分の税法上の規定は適用されません。
  • ※当分の間、年金収入につき公的年金等控除額(65歳以上である人に係るものに限る。)の控除を受けた人については、公的年金等に係る所得金額から15万円を控除した所得金額を用いて軽減判定します。
  • ※世帯主が被保険者でない場合でも、その世帯主の所得が軽減判定の対象所得に含まれます。

② 被用者保険(会社の健康保険など)の被扶養者であった人の保険料軽減

後期高齢者医療制度に加入する日の前日において、会社の健康保険や共済組合、船員保険等の被用者保険の被扶養者であった人も個別に保険料を負担することになります。当面の間、所得割額は賦課されず、資格取得後2年間は均等割額の5割が軽減されます。

  • ※後期高齢者医療制度に加入する日の前日において、国民健康保険・国民健康保険組合に加入していた人は対象外。
  • ※上記の保険料の軽減措置において、7割軽減に該当する人については、均等割額の軽減割合は7割軽減が適用されます。

(5)後期高齢者医療制度ではどのような給付を行っていますか?

後期高齢者医療制度において、被保険者に支給する医療給付の種類は基本的には従来の老人保健制度や国民健康保険制度で支給されているものと同じです。
後期高齢者医療制度の保険給付は下表の通りです。
なお、生活習慣病などの早期発見や予防を図るために、年に1回の無料健康診査や人間ドックの補助を実施している広域連合もあります。

保険給付の種類と概要

療養の給付 病気やけがで保険医療機関などにかかるときは、被保険者証を提示することで、かかった医療費の1割負担、または、一定以上所得のある人は2割負担、さらに現役並み所得者は3割負担で受診することができます。
入院時
食事療養費
被保険者が入院した場合、食費にかかる費用のうち、標準負担額(負担区分ごとで異なります)を負担します。
入院時
生活療養費
被保険者が療養病床に入院した場合、食費と居住費にかかる費用のうち、標準負担額(負担区分ごとで異なります)を負担します。
保険外併用
療養費
保険が適用されない、厚生労働大臣が定める先進医療などの療養を受けるとき、一定の条件を満たした療養であれば、一般的な診療部分(診察・検査・投薬・入院など)は自己負担分を除き、保険外併用医療費として広域連合が負担します。
療養費 急病などで被保険者証を持参せずに保険医療機関などにかかった場合や、海外に渡航中の治療や、コルセットなどの治療用装具を購入した時などは、いったん全額自己負担しますが、申請して保険適用が認められると自己負担分を除いた額が療養費として支給されます。
訪問看護
療養費
居宅で療養している人が、主治医の指示に基づいて訪問看護ステーションを利用した場合、利用料(訪問看護に要した費用の1割、一定以上所得のある人は2割、現役並み所得者は3割)を支払い、残りを広域連合が負担します。
特別療養費 保険料を滞納し、資格証明書(※)の交付を受けている人が医療機関で受診した場合、いったん医療費の全額を支払いますが、申請により支払った費用の一部が払い戻されます。

※資格証明書とは、災害などの特別の理由がなく、1年以上後期高齢者医療制度の保険料の滞納が続いた場合には、被保険者証を返還し、「資格証明書」が交付されます。資格証明書の交付を受けた場合、医療機関の窓口では、いったん医療費の全額を支払い、その後、各市町窓口で申請し、保険給付費相当額の支給が受けられます。

移送費 けがなどにより、移動が困難な患者が医師の指示により一時的、緊急的な必要性があって移送された場合には、緊急その他やむを得なかったと広域連合が認めた場合に限り移送費が支給されます。
高額療養費 1か月に支払った医療費の自己負担額が負担区分ごとに定められた限度額を超えた場合は、申請して、限度額を超えた分が高額療養費として支給されます。
入院の際は各月ごとに負担区分ごとの限度額までの負担となります。
高額介護
合算療養費
その年の8月1日から翌年の7月31日までの介護サービスの利用料と医療費の自己負担額の合算が、負担区分ごとに定められた限度額を超えた場合は、限度額を超えた分が支給されます。
葬祭費 被保険者が死亡したとき、葬儀を行った人に対して、申請により葬祭費が支給されます。

(6)被保険者証で治療を受ける場合の給付にはどのようなものがありますか?

①療養の給付
被保険者が病気やけがをしたとき、後期高齢者医療制度を扱っている病院・診療所にかかった場合、被保険者証を提示すれば、診察、投薬、薬の支給、処置、手術、入院などの治療を治るまで受けることができます。
なお、保険医療機関や保険薬局で調剤を受けた場合、これらの窓口で一部負担金(1割または2割あるいは、3割)を支払います。
窓口で支払う一部負担金は次の通りです。

所得区分による窓口での一部負担金(外来・入院に共通)

所得区分 一部負担金の割合
現役並み所得者※ 医療費の3割
一定以上所得のある人 医療費の2割
一般 医療費の1割

医療機関窓口での自己負担割合は、一般の人は1割、一定以上の所得のある人は2割、現役並み所得者は3割となります。
自己負担割合については、次のフローチャートで判定します。

自己負担割合フローチャート
  • ※1 「課税所得」とは住民税が課税される所得額(前年の収入から、給与所得控除や公的年金等控除、所得控除(基礎控除や社会保険料控除等)を差し引いた後の金額。市町村民税・都道府県民税納税通知書が届く方は「課税標準」の額)です。 なお、同一世帯に合計所得金額が38 万円以下である19 歳未満の控除対象者がいるときは、その人数に一定額(16 歳未満33 万円、16 歳以上19 歳未満12 万円)を乗じた額を世帯主である被保険者の市町村民税課税所得から控除します。
  • ※2 「年金収入」とは、公的年金等控除を差し引く前の金額で、遺族年金や障害年金は含みません。
  • ※3 「その他の合計所得金額」とは事業収入や給与収入等から、必要経費や給与所得控除を差し引いた後の金額です。
  • ※4 収入額が一定の基準に該当するときは、基準収入額適用申請をすることにより2割または1割の負担に変更となる場合があります。詳しくは次項「●基準収入額適用申請について」をご確認ください。 (申請不要の場合があります。申請の要否については、居住地の市区町村担当窓口にお問い合わせください。)
  • ※この他に、昭和20年1月2日以降生まれの被保険者と同一世帯の被保険者の保険料の賦課のもととなる所得金額(注)の合計額が210万円以下の場合は2割または1割の負担になります。) (注) 保険料の賦課のもととなる所得金額とは、前年の総所得金額および山林所得金額ならびに他の所得と区分して計算される所得の金額(分離課税として申告された株式の譲渡所得や配当所得・土地等の譲渡所得など)の合計額から基礎控除額を控除した額です。(雑損失の繰越控除額は控除しません。)また、基礎控除額は地方税法第314条の2第2項に定める金額になります。(例:前年の合計所得金額が2,400万円以下の場合、43万円)

●基準収入額適用申請について

3割負担と判定された場合でも、収入額(※)が次表の基準に該当するときは、申請(後期高齢者医療基準収入額適用申請)により申請された月の翌月から1割または2割負担になります。

  • ※申請不要の場合があります。申請の要否については、居住地の市区町村担当窓口にお問い合わせください。

②入院時食事療養費
被保険者が入院した場合、診察などの医療費のほかに、1食の食事にかかる費用のうち、460円(標準負担額)を自己負担することになります。
ただし、所得に応じて標準負担額は異なります。
標準負担額を超えた分は、入院時食事療養費として給付されます。

入院時食事代の標準負担額

所得区分 負担額
(1食あたりの食事代)
現役並み所得者および一般
※「現役並み所得・一般の被保険者」には、令和4年10月1日から自己負担割合が「2割」となる人を含みます。(下記以外の人)
460円
指定難病患者(区分Ⅰ・Ⅱを除く)(注4) 260円
市町村民税
非課税世帯
低所得者II
(注1)
市町村民税非課税世帯で過去1年の入院日数が90日まで 210円
市町村民税非課税世帯で過去1年の入院日数が90日超(注2) 160円
低所得者I(注3) 100円

(注1)低所得者IIとは世帯の全員が市町村民税非課税の被保険者(低所得者I以外の被保険者)をいいます。

(注2)世帯の全員が市町村民税非課税で、過去1年で入院日数が90日を超えた人。適用にあたっては「後期高齢者医療制度限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要です。

(注3)「低所得者I」は世帯の全員が市町村民税非課税で、その世帯の各所得が必要経費を差し引いたとき0円となる被保険者(年金の場合は年金収入80万円以下)をいいます。

(注4)平成28年3月31日において、1年以上継続して精神病棟に入院していた人で、引き続き医療機関に入院する人についても対象


③入院時生活療養費
被保険者が療養病床に入院した場合、食費と居住費にかかる費用のうち、標準負担額(所得区分ごとに設定されます。)を除いた額を広域連合が負担します。
なお、療養病床とは、主として長期にわたり療養を必要とする人のための病床のことです。

入院医療の必要性の高い人以外の患者の場合

区分 生活療養標準負担額
現役並み所得者および
一般の被保険者
※「現役並み所得・一般の被保険者」には、令和4年10月1日から自己負担割合が「2割」となる人を含みます。
入院時生活療養(1)を算定する保険医療機関に入院している人 食費:1食につき 460円(注3)
居住費:1日につき 370円
入院時生活療養(2)を算定する保険医療機関に入院している人 食費:1食につき 420円
居住費:1日につき 370円
低所得者II(注1) 食費:1食につき 210円
居住費:1日につき 370円
低所得者I(注2) 老齢福祉年金受給者以外の方(4以外の方) 食費:1食につき 130円
居住費:1日につき 370円
老齢福祉年金受給者 食費:1食につき 100円
居住費:1日につき 0円

(注1)低所得者IIとは世帯の全員が市町村民税非課税の被保険者(低所得者I以外の被保険者)をいいます。

(注2)「低所得者I」は世帯の全員が市町村民税非課税で、その世帯の各所得が必要経費を差し引いたとき0円となる被保険者(年金の場合は年金収入80万円以下)をいいます。

(注3)病院の届出により、1食あたり420円の場合もあります。

(注4)低所得者IとIIの人は療養の際に適用にあたっては「後期高齢者医療制度限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要です。


④保険外併用療養費
現在の医療保険制度では、原則として保険診療と保険外診療は同時に受けられないことになっています。保険外診療が一部でもあると、保険診療の部分も含めて全額自己負担となります。
ただし、保険外診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める「評価療養(7種類)」と「選定療養(10種類)」については、保険診療との併用が認められています。
通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同じように扱われ、その部分については一部負担金を支払い、残りの額は「保険外併用療養費」として給付されます。

(A)評価療養(7種類)
先進医療(高度医療を含む)、医薬品の治験に係る診療、医療機器の治験に係る診療、薬事法承認後で保険収載前の医薬品の使用、薬事法承認後で保険収載前の医療機器の使用、適応外の医薬品の使用 、適応外の医療機器の使用

(B)選定療養(10種類)
特別の療養環境(差額ベッド)、歯科の金合金等、金属床総義歯、予約診療、時間外診療、大病院の初診、小児う触の指導管理、大病院の再診、180日以上の入院、制限回数を超える医療行為

⑤訪問看護療養費
居宅で療養している方が、主治医の指示に基づいて看護師等が行う療養上の世話や必要な診療が行われた場合、利用料(所得区分が現役並み所得者の人は3割、一定以上所得のある人は2割、それ以外の人は1割)を支払います。

(7)医療費を立て替え払いした場合の給付にはどのようなものがありますか?

①療養費
やむを得ない事情で、保険医療機関で保険診療を受けることができず、本人が医療費の全額を立て替えた場合、本人の申請により、支払った費用の一部の払い戻しが受けられます。
たとえば、次のケースが該当します。
・海外に渡航中に治療を受けたとき
・療養のため、医師の指示により義手・義足・義眼・ギプス・コルセットなどを装着したとき
・輸血のために用いた生血代がかかったとき

・医師が必要と認める、はり師、灸師、あんまマッサージ指圧師の施術を受けたとき(後期高齢者医療を取り扱う接骨院等で施術を受けた場合は、被保険者証を提示することで一部負担金を支払うだけで済みます。)

・急病などでやむをえず被保険者証を持たずに診療を受けたとき(広域連合が認めた場合に限られます。)などです。

②高額療養費
病気やけがで入院・手術などをして、重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引く場合には、医療費の自己負担額が高額となることがあります。
そこで、保険医療機関や保険薬局で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額(自己負担限度額といいます)を超えた場合に、その超えた額を支給する制度です。
ただし、保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は高額療養費の対象外です。
なお、支給対象者には広域連合から申請案内が送付されますので、必要事項を記入し、期限内に返送します。
高額療養費の適用は申請しなければなりませんが、一度申請すると、振込口座に変更がない限り、以後の申請の必要はありません。


(ア)自己負担限度額を超えた場合

1か月当たりの医療費の自己負担限度額(平成30年7月診療分まで)

所得区分 外来(個人ごと) 外来+入院(世帯単位)
現役並み所得者
(注1)
57,600円 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
[4回目から44,400円(注4)]
一般 14,000円
(年間144,000円上限)
57,600円
[4回目から44,000円(注4)]
区分II(注2) 8,000円 24,600円
区分I(注3) 8,000円 15,000円

(注1)現役並み所得者は住民税課税所得が145万円以上の人、または、同一世帯に住民税課税所得が145万円以上の後期高齢者医療で医療を受ける人がいる人です。

(注2)世帯全員が市町村民税非課税世帯(区分Iを除く)などです。

(注3)世帯全員が市町村民税非課税世帯で所得が一定額以下(年金収入80万円以下等)などです。

(注4)現役並み所得者および一般で、過去12か月間に4回以上の高額療養費の支給があった場合は、4回目以降の外来+入院の限度額は、多数該当として44,400円になります。

(注5)区分I・IIの人が入院の際に、医療機関の窓口で減額を受けるためには、「限度額適用・標準負担額減額認定証」が必要です。

【例】所得区分が現役並み所得者で、総医療費が100万円で、窓口の一部負担金(3割)が30万円かかる場合
自己負担限度額=80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円
高額療養費として支給される額=一部負担金300,000円-自己負担限度額87,430円=212,570円

高額療養費

【平成30年8月診療から令和4年9月診療まで】

所得区分 自己負担
割合
外来
(個人ごと)
外来+入院
(世帯ごと)
現役並み所得Ⅲ
課税所得690万円以上
3割 252,600円+(総医療費-842,000円)× 1%
〔140,100円〕(注2)
現役並み所得Ⅱ
課税所得380万円以上
167,400円+(総医療費-558,000円)× 1%
〔93,000円〕(注2)
現役並み所得Ⅰ
課税所得145万円以上
80,100円+(総医療費-267,000円)× 1%
〔44,400円〕(注2)
一般(注1) 1割 18,000円(注3) 57,600円〔44,400円※3〕
区分Ⅱ(低所得Ⅱ) 8,000円 24,600円
区分Ⅰ(低所得Ⅰ) 8,000円 15,000円

(注1)世帯収の合計額が520万円未満(1人世帯の場合は383万円未満)で、基準収入額適用申請にて自己負担割合が1割になった場合や、「旧ただし書所得」の合計額が210万円以下の場合も含みます。

(注2) 〔 〕内の金額は、過去12か月の自己負担限度額を超えた給付を3回以上受けた場合、4回目以降の給付時から適用されます。(多数回該当)
ただし、「外来(個人単位)」が廃止されるため、現役並み所得者の人は、個人の外来のみで「外来+入院(世帯単位)」の自己負担限度額に該当した場合も、多数回該当の回数に含みます。

(注3)計算期間(毎年8月1日から翌年7月31日)のうち、一般区分または住民税非課税区分であった月の外来の自己負担額の年間上限額は144,000円となります。(基準日時点〔計算期日の末日〕で一般区分または住民税非課税区分である人が対象です)

【令和4年10月診療から】

所得区分(注1) 自己負担
割合
外来
(個人単位)
外来+入院
(世帯単位)
現役並み所得者Ⅲ
課税所得690万円以上
3割 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
〔140,100円〕(注2)
現役並み所得者Ⅱ 課税所得380万円以上 3割 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
〔93,000円〕(注2)
現役並み所得者Ⅰ 課税所得145万円以上 3割 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
〔44,400円〕(注2)
一般Ⅱ 2割 (1)18,000円
(2)6,000円+(総医療費(注3)-30,000円)×10%(注4)
いずれか低い方を適用(注5)
57,600円 〔44,400円〕 (注2)
一般Ⅰ 1割 18,000円(注5) 57,600円 〔44,400円〕(注2)
区分Ⅱ(低所得者Ⅱ) 1割 8,000円(注5) 24,600円
区分Ⅰ(低所得者Ⅰ) 1割 8,000円(注5) 15,000円
  • (注1)所得区分
    1. 〇現役並み所得者III…市町村民税の課税所得が690万円以上の被保険者及びその被保険者と同一世帯の他の被保険者
    2. 〇現役並み所得者II…市町村民税の課税所得が380万円以上690万円未満の被保険者及びその被保険者と同一世帯の他の被保険者
    3. 〇現役並み所得者I…市町村民税の課税所得が145万円以上380万円未満の被保険者及びその被保険者と同一世帯の他の被保険者
      1. ※昭和20年1月2日以降生まれの被保険者で、本人及び被保険者である世帯員の旧ただし書き所得(前年度の総所得金額等から43万円を控除した額)の合計額が210万円以下の場合は、1割負担となります。
      2. ※次の1または2の要件に該当するときに、市区町村の窓口に申請し、認定された場合は、自己負担割合が1割になります。
      3. ※市区町村で収入金額の確認ができた人については、申請によらず1割負担となります。
      4. ①同一世帯に本人以外の後期高齢者医療制度の被保険者の方がいる場合で本人とその被保険者の収入の合計額が520万円未満である
      5. ②同一世帯に本人以外の後期高齢者医療制度の被保険者の方がいない場合で、下記のア・イのいずれかに該当するとき
        ア 被保険者本人の収入額が、383万円未満
        イ 被保険者本人の収入額が、383万円以上であっても世帯の70歳~74歳の人(後期高齢者医療制度の被保険者を除く。)を含めた収入の合計額が520万円未満
    4. 〇一般 II…自己負担割合が3割以外で、市町村民税の課税所得が28万円以上の被保険者を含む世帯のうち、次のいずれかに当てはまる被保険者。
      ・被保険者が1人世帯の場合、年金収入+その他合計所得金額が200万円以上
      ・被保険者が2人以上の世帯の場合、年金収入+その他合計所得金額が320万円以上
    5. 〇一般 I…「現役並み所得者Ⅲ」「現役並み所得者Ⅱ」「現役並み所得者Ⅰ」「一般Ⅱ」「区分Ⅱ」「区分I」以外の被保険者
    6. 〇区分II(低所得者II)…同一世帯の方全員が市町村民税非課税の被保険者(区分I以外の被保険者)
    7. 〇区分I (低所得者I)…・世帯の全員が市町村民税非課税で、その世帯全員の個々の所得(公的年金収入は控除額80万円で計算し、給与収入は給与所得控除後さらに控除額10万円で計算した額)が0円となる被保険者
    8. ・世帯の全員が市町村民税非課税であり、かつ、本人が老齢福祉年金を受給している被保険者
  • (注2)〔 〕内の金額は、過去12か月間に高額療養費の支給が3回あった場合の4回目以降(多数該当)から適用される限度額です(ほかの医療保険での支給回数は通算されません。)。「外来(個人単位)」の限度額による支給は、多数該当の回数に含まれません。ただし、「現役並み所得者」の被保険者は、個人の外来のみで「外来+入院(世帯単位)」の限度額に該当した場合も、多数該当の回数に含まれます。
  • (注3)総医療費が30,000円未満の場合は、30,000円として計算。
  • (注4)所得区分「一般Ⅱ」の外来自己負担限度額の(2)は2割負担施行後3年間(令和7年9月30日まで)の激変緩和措置になります。
  • (注5)計算期間(毎年8月1日から翌年7月31日)のうち、所得区分が「一般Ⅰ・Ⅱ」または「区分Ⅰ・Ⅱ」であった月の外来の自己負担額の年間上限額は144,000円となります(基準日時点〔計算期日の末日〕で所得区分が「一般Ⅰ・Ⅱ」または「区分Ⅰ・Ⅱ」である人が対象)。

(イ)75歳誕生月の特例制度
月の途中に75歳の誕生日を迎え、後期高齢者医療制度の被保険者となる人は、誕生月に「誕生日前の医療保険」と「後期高齢者医療」の2つの制度に加入することになるため、75歳の誕生月に限り、本来額の2分の1の額が適用されます。
なお、1日生まれの人は75歳の誕生月に加入している制度が後期高齢者医療制度のみの場合は、特例制度の対象外です。

③高額介護合算療養費
世帯で1年間(その年8月1日~翌年7月31日まで)に支払った後期高齢者医療制度の自己負担額と介護保険の利用負担額の合算額が、世帯の自己負担限度額(下表)を超えるときは、後期高齢者医療制度と介護保険それぞれの制度から払い戻されます。
なお、後期高齢者医療制度または介護保険の自己負担額のいずれかが0円の場合には対象となりません。
また、自己負担限度額を超える額が500円以下の場合については支給の対象となりません。

高額介護合算療養費の自己負担限度額(年額・世帯単位)

所得区分(注1) 介護合算算定基準額
(毎年8月~翌年7月)
現役並み所得者Ⅲ 212万円
現役並み所得者Ⅱ 141万円
現役並み所得者Ⅰ 67万円
一般 (注2) 56万円
低所得者Ⅱ(区分Ⅱ) 31万円
低所得者Ⅰ(区分Ⅰ) 19万円

(注1)所得区分については、高額療養費をご参照ください。

(注2)令和4年10月診療分から一般Ⅰ、一般Ⅱに分かれました(限度額は同じ)

(8)緊急時などに移送されたときにはどのような給付がありますか?

入院や転院などのための移動が困難な被保険者で、医師の指示で一時的・緊急的必要があり、移送された場合、緊急その他やむを得なかったと広域連合が認めた場合に限り「移送費」が支給されます。
移送費の額は、最も経済的な通常の経路および方法により移送された場合の旅費に基づいて算定した額の範囲内での実費になります。
医師等の付添人(必要な場合に限る)が同乗した場合、その人の人件費は、療養費として支給されます。
ただし、通院など一時的、緊急的とは認められない場合には、支給の対象とはなりません。

(9)亡くなったときにはどのような給付がありますか?

被保険者が亡くなったときは、葬祭を行った人に対して「葬祭費」が支給されます。
葬祭費の額は広域連合ごとに異なり、支給される額は5万円ほどになります。

(10)保険料の納付方法はどのようになっていますか?

後期高齢者医療制度の保険料の納付方法は年金の受給額によって、「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。

①特別徴収(公的年金からの天引き)
公的年金などの支給額が年額18万円以上の人は、原則として2か月ごとに支払われる年金から2か月分に相当する保険料が天引きされます。
ただし、年度途中で他の区市町村から転入した人や、新たに加入した人は、一定期間特別徴収にはなりません。
介護保険料と合わせた保険料額が、徴収対象となる年金の2分の1を超える場合には特別徴収されず、納付書による納付(普通徴収)となります(その場合、介護保険料は特別徴収されます)。

②普通徴収(納付書による納付)
特別徴収の対象とならない人は、住所地の市区市町村から送付される納付書で保険料を納付することになります。
なお、口座振替(自動払込)を希望する場合には、住所地の市区町村役場の後期高齢者医療制度担当窓口で手続きをします。
保険料の納期限は納付月の月末で、納期限を過ぎても納付がない場合は、督促状が送付されることになります。

  • ●特別徴収の対象とならないケース
  • ・公的年金の支給額が年額18万円未満の人
  • ・介護保険料とあわせた保険料額が、年金額の2分の1を超える人
  • ・年度途中で新たに加入した人
  • ・年度途中で他の市区町村から転入した人
  • ・年金担保貸付金を返済中、または貸付開始された人

(11)交通事故などにあったときは被保険者証を使用できますか?

交通事故や傷害事件など、第三者(加害者)から傷害を受けた場合や自損事故の場合も、後期高齢者医療の被保険者証を使って、医療を受けることができます。
ただし、住所地の担当窓口に届け出(『第三者行為による傷病届』)が必要です。
なお、第三者の行為によって受けた傷病の治療に要する医療費は、原則として加害者(相手側)が全額負担すべきものです。
このため、被害者が後期高齢者医療で治療を受けると後期高齢者医療はその医療費を一時的に立て替え、後日加害者に立て替えた医療費を請求します。
注意点ですが、市区町村へ届け出をする前に、加害者から治療費を受け取ったり、示談を済ませてしまうと、後期高齢者医療で立て替えた医療費を加害者に請求できなくなる場合がありますので、十分注意しましょう。