第2部:特別鼎談

「わがまち富山!!」~活気あるまちづくり~

柴田 理恵 氏(女優・タレント)

柴田 理恵 氏女優・タレント

片山 善博 氏(慶應義塾大学法学部教授 元鳥取県知事 元総務大臣)

片山 善博 氏慶應義塾大学法学部教授
元鳥取県知事
元総務大臣

森 雅志 氏(富山市長)

森 雅志 氏富山市長

■富山の魅力とは

廣川 奈美子 氏

富山の魅力についてお伺いします。

柴田 理恵 氏

大自然、水、魚、米、酒。また、一つのことに真面目に取り組む人が多いという印象。東京で暮らして富山の米や野菜のおいしさが分かりました。

片山 善博 氏

富山市のまちづくりに関心があります。LRT(次世代型路面電車システム)で基幹交通を形成する施策は全国から注目されています。大学のゼミでは地方自治をテーマにしていて、毎年地方で研修を行いますが、2年前に学生は富山市を選びました。交通政策をはじめ、教育や福祉、子育てなどの取組みを研究するためです。

森 雅志 氏

富山市は待機児童ゼロなど、安心して子育てできる環境が整っています。子育て支援策として10 月からお迎え型病児保育を始めます。厚生労働省の制度を変えるまでに2年かかりました。全国第1号です。西田地方保育所で先行的に実施し、来年4月から、総曲輪小跡地に開設する地域包括ケア拠点施設で本格的にスタートします。市役所の出先は79 カ所で、ほとんどの市民の2キロ圏内に地区センターがあり、行政サービスを受けられます。コンパクトシティとして中心部を整備しながら、円周部にもきめ細やかなサービスをしていきたい。

片山 善博 氏

待機児童、保育所の問題は都会では切実です。国から「前例がないからダメ」と言われると、多くの自治体は不便なまま国の規則に合わせます。国を説得し、打ち破れるかどうかです。国の制度を中心に考えるのではなくて、地域の問題を地域本位に考えて現状を変えていこうというのが地方創生。富山市の取り組みは地方創生の面から見て非常に素晴らしいと思います。

森 雅志 氏

富山は高等教育機関のキャパが小さく、若い人はいったん東京などへ出ますが、富山に戻ってくるようにしなくてはいけません。それには私たちが街を光らせること。若い人から「富山はいいよね」と思ってもらえるように、魅力的なポジションを作ることが大事です。

■東京のミニ版ではないオンリーワンの街に

廣川 奈美子 氏

いい街とはどんな街だと思いますか。

柴田 理恵 氏

ロケや芝居の巡業で駅を降りると、コンビニやファストフード、全国チェーンの居酒屋の看板が並んでいる街は何度行っても印象がありません。その土地らしい、匂いのある街がいいと思います。富山の街が東京のミニ版ではない、オンリーワンの街になってほしいですね。

森 雅志 氏

富山駅前に鮮魚を販売する店ができます。富山国際会議場の1階には、富山の食材にこだわった総菜を販売する「コンパクト・デリ・トヤマ」がオープンしました。

片山 善博 氏

知事時代にあったらいいと思ったのが、地元の民謡や伝統芸能を楽しみながら食事ができる店。民謡酒場が成り立つのは地域の伝統文化を大切にしているという証しです。でも今地方では文化的な特色が失われてきていて、そんな店はめったにありません。ただ沖縄にはある。島唄を地元の人と観光客が一緒に楽しめます。

廣川 奈美子 氏

活気あるまちづくりにとって観光は大事でしょうか。

片山 善博 氏

観光は裾野の広い産業です。観光客の反応から地域を客観視でき、魅力を見つめ直すきっかけにもなります。今は観光のニーズが多様化しています。地元で当たり前だと思っていたところが、人気になったりもします。

柴田 理恵 氏

都会から観光に来た人は田舎の何気ない風景に魅了されます。昔ながらのそのまんまの風景がいいと思う人も多い。土地の人から受けた親切も思い出になります。

森 雅志 氏

今日は富山で薬膳料理を食べ、明日は金沢、明後日は五箇山や高山へといったように、富山市は観光のゲートウェイとしての機能を備えています。2~3週間滞在し、和漢薬診療を受けたり、温泉で体を元気にするといった滞在型のヘルスツーリズムも観光の一つの切り口だと思います。

■地方の豊かさを家庭で見つめ直す

廣川 奈美子 氏

地方創生が身近な問題として、まさに私たちにも関係しているということが分かりました。若者へのメッセージや今後の展望を。

柴田 理恵 氏

「富山に生まれてよかった」とその幸せに気づくこと。故郷を大事に守っていけば、宝石のように輝くと思います。そうすれば、他県の人から「富山はきれいだよね」「おいしいものがあるね」などと評価されるようになるはずです。

森 雅志 氏

女性たちが仕事や子育てを頑張り、子どもといい関係を築けるような環境づくりが大事です。シングルマザーの雇用奨励金制度や「がんばるママに『ありがとうと花束』事業」を設けています。小中学生が緊急時にSOSできる24時間の相談窓口も作りました。富山は産業基盤がしっかりしています。北信越の県庁所在地5市の中で工業出荷額が1位。有効求人倍率は高く、安定して仕事があります。人口減少率は全国平均よりも低く、8年連続転入超過です。中心部では昨年初めて人口増になりました。人口減少を止めることは難しいと思いますが、ゆっくりと減るようにしていく。地方創生の流れの中で、富山は光輝いていくことができるポテンシャルを持っています。その光を上手く発信していきたい。

片山 善博 氏

「地方はつまらない、何もない」と思っている人がいます。東京に行くと何かいいことがあると思いがちですが、生活の質を考えると、東京はある面で最悪です。そんな意識はどこから生まれるのか。一つは、勉強していい学校へという追い出し教育です。また、家庭で親や祖父母が地域での生活をいきいきと楽しんでいる姿を子どもの世代に見せているかどうか。地のものを地元で作られた食器で楽しく食べる、美しい風景を見る。日常生活でそんな時間を家族みんなで楽しみ、地元の良さを再認識することが、地方創生の大きな力になるのではないかと思います。

出典:5月22日(日)北日本新聞

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