新しい働き方
~ワークシェアリングで居住地域での雇用を~

―お話を聞いていて、高齢者マーケットへの新商品・新サービス開発というか、そういうところにこそ投資減税を集中的に適用するなどの政策的な手段を講じれば、可能性は高まるような気がしました。では、就労モデルについては、いかがでしょうか?

就労モデルの新しい働き方について少し説明したいと思います。就労事業の目的の1つは、先ほどお話ししたように地域の資源をうまく活用して、なるべくたくさんのセカンドライフの新しい働き場をつくること。もう1つは、新しい働き方の開発です。
まず、就労高齢者の側からすると、自分で時間を決めて働く。例えば月水金働いて、火木はゴルフをする。午前中だけ働いて、午後はボランティアをする、あるいは孫の世話をする。また、私は元気な人だけ働けばよいとは思っていません。身体が弱っても外へ出て人と交わって働いて、なにがしかの収入があるというのはとてもよいことだと思います。だから、たとえ車椅子になっても時間数を減らし、1週間に1日3時間だけでも働けるような場をつくることを目指しています。

しかし、雇用する側は、フルタイムの仕事があるとなると、「自分は何時間働きます」という人ばかりでは困ります。そこで徹底してワークシェアリングを導入しています。就労セミナーを7回実施して、現在までに500人ぐらいの方が登録しています。例えば、3人分のフルタイムの仕事を5人のチームを組んでワークシェアリングをする。「自分はこの時間に働けます」とか、「もし、このとき必要であれば自分は働けます」という風に働ける時間を登録しておきます。そうすると、本当は働く日だけれども、家族を病院に連れて行かなければいけなくなったというときには、ほかの人が働いてくれるので、穴をあけないで仕事ができます。

農業事業に着手した時、若手の事業者に私が、「サラリーマンを定年退職した方が」と言うと、「エーッ、丸の内で何十年も働いていた人が農業できるんですか。しかも年寄りでしょう」という反応でした。農業者は、自分たちと同じように夜明けから日が暮れるまでずっと畑で働くという想定ですから、本当にできるのかと思うのです。高齢者は自分の体力を知っており、働く時間を決めます。例えば暑いときには、朝の5時から8時まで3時間働くことはできます。もし仕事が多ければ、たくさんの人が働けばよいのです。

そういう柔軟な雇用制度で実施してみると、働く側にとっても、雇用する側にとっても都合がよいことが分かりました。農業では雨が降ったら人は要りません。しかし、雨が3日後にやむと、普通の3倍ぐらいの人が必要になる。収穫期にも人がたくさん要る。高齢者施設では、朝食と夕食時に人が必要。そういう人の要る時間がありますが、ワークシェアリングの態勢をとっていると柔軟に対応できます。就労者だけでなく雇用者にとっても融通無碍なのです。そういう意味で、セカンドライフの新しい働き方は、双方にとって利点があるのではないかと思います。