介護と医療の連携拠点としての役割と効果

―厚生労働省の在宅医療連携拠点事業という国のモデル事業に2011年、2012年に
採択を受けたということで、医療と介護の連携拠点としての暮らしの保健室の役割を教えてください。

訪問看護は症状が重たくなってから利用される方が多いので、もう少し予防的な視点も含めて、その入り口にいる人や、病院に通っているけれども十分な相談支援が受けられず、ぎりぎりのところで在宅医療や看護につながってくる人たちが、もっと前から気軽に相談できる場所があればいいなという思いを抱えながら訪問看護にあたっていました。「暮らしの保健室」で相談を受けることで、相談者の相談内容から地域の医療連携がうまくいっていないような、地域の中で起こっている問題がたくさん拾い出されます。それをここで調整して、組み替えていく作業をまずしています。

毎月1回、この「暮らしの保健室」で勉強会をおこなっています。勉強会にはたくさんの方が参加していますが、その方たちは、病院から来られたり、地域のお医者さんだったり、歯医者さんだったり、ケアマネジャーさんだったり、病院の中にいるケースワーカーさんだったり、退院調整の看護師さんだったり、そういう人が一堂に会して、この連携はうまくいったかどうかというのを事例をもとに検討するので、非常に具体的です。そうすると、そのケースに対する解決策だけではなくて、地域全体の連携力が上がります。それは確実な手ごたえがある状態です。

さまざまな相談が寄せられるので、それをどこにつなげばいいかというときに、勉強会などの関係性の中で、「こんな相談が入っています」「お宅の病院にかかっている方がこういうことでお困りのようです」「病院の中のこの科とこの科の2つにかかっていて、どうもその情報共有ができてなさそうです」「かかりつけ医を探しているようなので、こういうふうに紹介をしたのだけれども、情報提供を出してもらえるか」など、そういうつなぎの役を担っていく。そういう意味では、ここが拠点としてあるので、ただただ待っているだけではなくて、ここに来た人の相談をうまく活用しながら連携ができるようになったというのが効果の一つにあるかなと思います。

また、ケアマネジャーさんたちが急性期の病院と連携をするときに、連携はだいぶよくなったのだけれども、まだまだ困難を感じています。そこを今度は、医療者、特に医師との連携をどうするかというので、地域の中で合同のグループワークも含めた会議を持ったりしながら、そこの垣根を少しずつ小さくしていくことをしてきました。その結果、行政でも具体的に取り組んでいただけるようになって、区が企画をしたりするようになってきました。そうすると、広がりを見せるというか、そこに薬剤師さんが入ってきたり、歯科医も巻き込めたりしてきて、そうした意味では今まで足並みがそろわなかった多職種連携が少し前に進み、地域での連携が、特に医療連携が進みやすくなってきたかなという感じはしています。