傾聴と情報提供が大切

―秋山さんが「暮らしの保健室」や「訪問看護ステーション」など医療・介護に関わられている中で、注意されている点や大切にされている点はどのようなことですか。

「暮らしの保健室」では相談を受ける際に、当事者目線を忘れない医療者としての関わりを大切にしています。医療相談がメインなので医療面が多いのですが、決して医療者だからという上から目線ではなくて、まずお話を聞く。傾聴がまずは第一です。

だいたい30分ぐらいお話を聞きます。「どういう相談で来られましたか」というような詰問調ではなくて、「どうなさいましたか」「何がお困りですか」とお聞きして、とにかく気持ちをよく吐き出していただいて、30分傾聴するだけで、人々は自分で解決していきます。そして、少しの助言として、こういう情報もありますよということでその方に沿った情報提供をします。これと傾聴を合わせると相談の4分の3は解決していきます。

しかし、30分という時間は、病院ではとても取れない時間です。予約を取って相談室に行って、例えばそのときに30分相談したいと言っても、たぶん「予約がいっぱいですので取り直してください」ということになります。

「暮らしの保健室」では、そういった相談には看護師が対応しています。他にも薬剤師やカウンセラーの資格を持った人や、栄養士さんなどの専門職ボランティアの方がいます。あとは整膚と言って、少し皮膚をつまんでゆるめてリラクゼーションをしてくれるボランティアの方もいます。このように専門性を持ったボランティアの人と、きちんと看護師のように人材で雇用した人を配置するために、訪問看護ステーションと兼務しながらここを運営しています。そのほかに地域のボランティアがたくさん登録しています。先ほど申し上げましたとおり、私たちの訪問看護を利用してご家族を看取ったご遺族の方も約半数が登録してくださっています。地域のボランティアの方は、月曜日~金曜日まで2人、多いときで4人配置します。

また、「暮らしの保健室」では、熱中症の対策講座を2011年の夏から毎年やってきています。その結果、重症者がだんだん減っているんですよ。1年目は運ばれて後遺症が残った人がけっこういたのですけど、毎年地道にやっているので、熱中症になっても大事にならずに軽い状態で済んだ人が増えている。それは明らかです。すぐに地域を変えるというのは無理ですが、このように種を少しずつまく仕事で、地道に地道に仲間を増やしていき、重症になる前に防ごうという取り組みもおこなっています。

このように知ってもらう活動はとても大事だと思っています。例えば介護をしている方が慌てないように、「救急車はすぐに呼ばないこと」「まずは訪問看護ステーションに」といって電話の横にうちの電話番号が書いてあったり、「慌てずに救急車を呼ぶな」と書いた紙を貼ったりしています。

それでも何かあるとすぐに救急車呼ぶ人がたまにいるけれど、でも、亡くなってしまって救急車を呼んだら、検屍ですぐに警察が呼ばれるんですよという話なども具体的にします。皆さん、できれば、病理解剖とは別に検屍は避けたいですよね。事件か、事故か、病死かというので検屍になっても、大塚の監察医務院に送られる前に、ご遺族のことを考えて、かかりつけ医にきちんと病気の説明をしてもらうとかそういうことで、見るだけの検屍で済むようにとか、かなり気を使います。誰でもできればそうしないで見送りたいですよね。だからかかりつけ医を持ちましょうということを皆さんに言っています。