第2部:パネルディスカッション

『自助』『共助』『公助』の役割分担と
安心して生活できる地域社会づくり

井戸 敏三 氏

井戸 敏三 氏兵庫県知事

室﨑 益輝 氏

室﨑 益輝 氏公益財団法人
ひょうご震災記念
21世紀研究機構副理事長

中村 順子 氏

中村 順子 氏認定NPO法人コミュニティ・
サポートセンター神戸理事長

寺島 実郎 氏

コーディネーター寺島 実郎 氏日本総合研究所理事長
多摩大学学長
三井物産戦略研究所会長

寺島 実郎 氏

この20年を振り返り、取り組んでこられたことや、問題意識識などをお聞かせください。

井戸 敏三 氏

兵庫の課題は、安全の確保、安全基盤をきちんと作り上げていくことだと確信しています。3月に仙台で第3回国連防災世界会議が開かれます。そこでは五つの提案をします。①創造的復興という大きな目標を目指すべきだ②地方自治体による国際防災協力③地方自治体レベルでの防災力の強化④防災教育・学習の重視⑤災害教訓の整理・発信 - です。南海トラフ巨大地震が起きると、犠牲者2万9000人、全壊建物3万7000棟という予測がありますが、津波対策などを行えば、400人、1万2000棟に激減します。これからの10年の対応が非常に重要です。

室﨑 益輝 氏

「心技体」というのが、私がたどり着いたキーワードです。「心」は助けたいという気持ち。「技」は技術、科学がないと人を助けることはできないこと。「体」は体制の体、システムです。災害は残酷です。家族を切り裂いたり、親を亡くして進学を断念させたりする。人生がそこで変わっていく。このつらさ、悲しさを忘れてはいけない。一方で、社会のひずみを気付かせてくれました。自然と人間のかかわりがどうだったのかなど、いろんなことを気付かせてくれました。

中村 順子 氏

震災直後の行動を、1次行動、2次行動、3次行動に分類しました。まず家族の安否の確認をし、次はご近所とか近隣の方、その次に友人、知人、会社の同僚、サークルの仲間と広がります。2次、3次行動で救出された方が全体の8割になったことが分かっています。「安心して生活できる社会」というのは、誰かとどこかで繋がっていることだと思います。私は人間が繋がり続ける手助けをしたいと思っています。震災では、自助、共助という言葉で語られることが多いのですが、福祉や介護の世界では相互に助け合う互助ということが言われています。この互助と共助の部分をもっと厚くしていこうと思っています。

寺島 実郎 氏

東日本大震災の被災地をみると、帰りたくても仕事がない、という状況がある。産業の空洞化です。兵庫も大変な努力をされたと思います。

井戸 敏三 氏

GDPは震災から5年くらいで震災前の水準を取り戻しましたが、それからほとんど実質GDPは変わっていない。これはボディブローがまだ効いているな、と考えています。兵庫の場合は、産業の幅と広がりがあったことが、3、4年で被災前に戻っていった理由ではないかと思います。東北の場合は第1次産業中心のところが多い。特に水産業が戻りきっていない。漁港、港自身が復旧していないところが多いので、これらを再建していくことが重要だと思います。

寺島 実郎 氏

今後の日本産業の最大の課題はサービス産業の高度化です。

井戸 敏三 氏

健康、医療、食糧生産、スポーツとか、メインではなかった事業がメインになっていく。それから観光。裾野の広い産業なので大きな地位を占めていくと思います。

室﨑 益輝 氏

産業の高付加価値化は重要です。東北は第1次産業の付加価値化、神戸はサービス産業、第3次産業の高付加価値化、教育や観光です。ネットワーク化も必要です。

寺島 実郎 氏

20年先を見据えた視点からのお考えをお聞かせください。

井戸 敏三 氏

南海トラフ巨大地震を考えると、民間住宅の耐震化を進めたい。それと津波対策。さらにソフト対策。避難所への筋道をどうするかとか、災害弱者と言われている人たちの避難計画とかです。

室﨑 益輝 氏

正しく恐れ、正しく備えることが重要です。阪神・淡路大震災、東日本大震災の最大の教訓だと思います。国土の強じん化と言いますが、コミュニティの強じん化も重要です。

中村 順子 氏

まず、多層的なコミュニティです。自治会のような組織と、NPOのようなテーマでつながるコミュニティの組み合わせが大事です。それは支援団体があってできるので、その働きかける主体をもっと強くしていかないといけない。二つ目は異なった主体がお互いに力を合わす協働。三つ目が教育です。

井戸 敏三 氏

社会資本、ハード、ソフトの整備は必要ですが、そこに住んで生活をしている人が、どのように課題に向き合うかがベースです。その意味も込めて、私は、「ふるさと意識」をみんなで持とう、「ふるさと兵庫」を作っていこう、そこに住んでいる人たちが故郷と思える兵庫づくりを進めようと、言いたいと思います。


出典:毎日新聞
写真:毎日新聞提供
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