災害復興からつながる減災のかたち~こころのつながり


ー 災害への日ごろの取り組みは、具体的にどのような方策を立てたらよいのか

室﨑氏:地震で家が壊れた後に耐震補強するのもいいのですが、それなら地震が起こる前にしておけば、命も救えると思うんですね。これを「事前復興」といいます。家屋の倒壊で人が亡くなることもなくなるし、まちもあらかじめ区画整理しておけば、火事が起きてもそんなに広がらなくなるので、やるべきことはやっておいたほうがいい。行政も事前復興の観点で支援したほうが、事後復興よりも安上がりで済みます。寄付金や義援金も同じで、災害が起こってから募るのではなく、いざというときのためにみんなでお金を集めておけば、その基金で住宅再建やまちづくりができるんです。

阪神・淡路、東日本を通じ、減災のサイクルという考えが生まれました。最初は耐震補強や家具の転倒防止による被害軽減、次に非常持ち出し袋の準備、災害時の救助活動を経て、最後に住宅再建による復興と安全なまちづくりが次の減災につながるというサイクルです。中でも、復興から被害軽減の取り組みが一番重要です。それを私たちは災害で繰り返し学んでいるのに、つい忘れてしまう。

今はまさに災害の時代ですよね。間もなく首都直下型地震や南海トラフ地震が起きるかもしれない。地球温暖化による異常気象で、大雨の降る回数はどんどん増えている。そこに新型コロナ感染症の問題もある。地震災害、豪雨災害、感染症と一度に三重苦を味わうことになるかもしれない。それを乗り切るには、事前準備をしないといけません。


神津:先ほどの自助共助の話に立ち戻りますが、自助とは防災の意識を高めておく、備えておくことだと思いますし、そしていざというときには支える側、共助に回るという意識を普段から持つことが、こくみん共済 coopグループとしても、非常に大事なポイントだなと改めて思います。


室﨑氏:共済の場合、みんなで支え合う気持ちが機能しているのが素晴らしいことだと思います。共済・保険の仕組み自体が、助けてもらうと同時に他の人を助けている。そこの理解ですよね。資金の面でいえば、「みんなで入る」ことが重要なんです。みんなが入っていれば、コミュニティというか住宅再建がすごく早い。まさに公共性なんですよ。これからは、住宅購入者が必ず加入する保障、自動車の自動車損害賠償責任保険(自賠責)のような制度の創設に発展させてほしいと思います。



ー コロナ禍で分断される社会において必要なもの、求められるものとは

室﨑氏:「ソーシャルディスタンス」っていう言葉がよくない。今いわれている三密回避とは、パーティションで区切るなどの物理的な距離、「フィジカルディスタンス」についてなんですよ。一方こうした状況下では「ソーシャルリレーション」、コミュニケーションをとるとか、話し合えるとか、人と人とのつながりがなおさら求められているんです。

私はそれを防疫性と免疫性と言っています。防疫性というのは感染しないように距離を離す。でも免疫性は、例えば外に出て思いっきり遊んで自然と触れ合ったり、おじいちゃんおばあちゃんと孫が一緒に遊んだりみたいなもので、免疫性で人間は元気になっていく。そういう免疫性を高めるような対策が、コロナ禍では必要だと思うんです。

そして免疫性に当てはまるのが、共済の仕組みだと思います。まさに人と人のつながりのある社会的な関係性が築かれている。そういうものをしっかりとつくっていくのは、次の巨大災害に備えるにあたっても意味があると思うんですよね。


神津:ずっとコロナの状況が続いていて、やはり気持ちに鬱積したものがみんなありますよね。社会というのは心と心のつながり、いきいきとしたものがあって成り立つ。共済もつながりがあるから仕組みが成り立つことを、しっかりと頭に置いておきたいですね。



ー 「防災・減災」「共助」の視点からのメッセージ

室﨑氏:阪神・淡路大震災、そして東日本大震災でみなさん非常に辛い経験をして、そこから被災者生活再建支援法のような制度や新しいソフトな支援制度が生まれてきました。しかし次にやってくる災害を考えたとき、阪神・淡路や東日本で支え合った仕組みだけでは、やはり十分ではないと思うのです。次の災害に備え、支える仕組みをもっと進化させ、強固なものにしていかないといけません。保険や共済の制度なども、もう一歩進んだそういう支え合うしくみをつくらないといけないと思います。みなさんと一緒に力を合わせ、新しい制度づくりをしたいという思いです。


神津:先生は非常に豊富な経験をお持ちで、そのこと自体が大変ありがたいことです。また今日のお話でも、先生が肝の部分をつかむことを模索されて、都度高めていらっしゃることが伝わって来ました。またこれから先の災害も見越して、共済も支え合いの力を高めていかなければならないと思いました。非常に貴重なお話をうかがうことができました。関係団体と社会に広く共有できるように、努めてまいりたいと思います。本当にありがとうございました。