私たちにできること

―会のメンバーや、医療市民マイスターではなくても、私たち一般市民一人ひとりが日本の医療のためにできることは何かありますか。

自分ですごく問題だと感じていることがあるのであれば、批判的なことをSNS上でつぶやいたりするのではなく、きちんとした形にまとめて、意見として伝えることが大事なのではないかと感じます。たとえば、市長・区長への手紙として書く、パブリックコメントとして出すというようなことです。

それから医療の問題で一人ひとりができることであれば、まず医療を知ることが大きな一歩だと思います。自分が住んでいる地域の医療がどのようになっていて、どこの病院がどんな状況になっているかをまずは知るということ。そして医療というのは、どこかよその誰かが関係することではなくて、みんながいずれ関わることになることですので、自分たちも一緒になって支えるという気持ちで、医療と付き合っていくことが大事だと思います。

まず自分の病気はすべて先生にお任せ、先生が何でも治してくれるものではなくて、病気についてまず自分が一番知ることが大事だと思います。先生方はもちろんプロの目で診察していますが、私たちが自分の体は自分に一番の責任があると思って、知っていくことがすごく大事だと思います。自分の状態の変化を適切に伝えることで、先生方もその適切な材料から診断をしてくださると思うので、それはとても大事なことだと思います。

子どもの病気について言えば、私たちが作成した「こどもからだメモ」というものに、熱とか尿、便、嘔吐、どんな状態かの記録を付けて、これを診察時に持っていくことで、診察がガラッと変わるということをメッセージとして伝えています。今までは「おとといは38度ぐらいだったけれど、昨日は37度で」と、あやふやに症状を伝えることがよくあると思うのですが、そういうことがなくなり、自分で記録をきちんと付けて持っていくことで、すぐに診断できるようになったと子どもの病気についてお伝えしています。これは大人でも同じで、病気についてまずは自分が学んで、分からないことは先生や看護師さんに率直に伺ったり、自分の体について自分がまずは責任を持つことが大事かなと思っています。

知ろう小児医療守ろう子ども達の会のHPよりダウンロードいただけます
http://www.shirouiryo.com/


それから医療の不確実性というものを知ってほしいと思います。医師がなんでも答えを持っていて、医師が全部治してくれると思う方もいると思います。また、子どもさんが亡くなることがこれだけ減ってくると、お産も安全に生まれて当然だと思いがちです。しかしそうではなくて、どうしても防げないものもあるということを私たちは常に知っていなくてはいけないなと思っています。どれだけ医療が進んでも、子どもさんたちに悲しいことが起きてしまうということもありますし、お産も安全なものではないので、本当は奇跡というか、一つひとつがそういうことの積み重ねなのだなということを認識していなくてはいけないということは、私がこの小児医療の会を始めて、初めて知ったことでした。

自分も全然知らなくて、子どもは元気に生まれて当たり前だと思っていましたし、元気に育つことが当たり前だと思っていたのですが、その日まですごく元気だった自分の子どもが急に重症化してしまい、どんな子でも重症化するという現実を目の当たりにして初めて、今こうして元気でいることのほうが奇跡なのだなということを思いました。

今は医療について知ることができる環境になってきていますので、ぜひ多くの方に医療について色々と知っていただきたいと思います。

―ありがとうございました。