就労収入積立制度(仮称)とは

―今回、「第2のセーフティネット」のひとつとして、就労収入積立制度(仮称)を導入していこうという議論がありますが、就労困難者の方々に期待されるこの新しい制度はどういうものですか?

生活保護の受給者が増えていることが問題になったのは、先ほど申し上げたとおりです。生活保護制度の目的の一つは自立を助長するということですが、実態としては経済的には自立しようにも自立が非常に困難な人たちが受給者の大半を占めることを、私たちがまずきちんと確認しておかなければいけないのかと思います。高齢の方、障害をお持ちの方、病気の重い方が大半を占めているということです。

ただ、そのいずれの条件にも該当しない「その他世帯」と言われる世帯が、確かに今17%を超えるぐらいまで来ているわけです。この人たちは、支援次第では働き出すことができる可能性があるということです。ただ、生活保護制度は補足性の原則が法律に書き込まれています。一定の最低生活水準に達するまでの所得は保障されるけれども、その水準まで自分で頑張って稼ぎ出すと、その分、給付額が減らされてしまう。こうした仕組みが、働き始めようというインセンティブを弱めているのではないかという指摘がずっとあったわけです。

これに対し、今度の生活困窮者の生活支援の一番大事な目的は、生活保護を受給する前の段階で、トランポリン機能で跳ね戻ってもらって自立した生活を送ってもらうことです。加えて、生活保護を現在受給しているけれども、経済的自立の条件があるかもしれない人たちに対してはしっかりその自立を支えよう、応援しようということも、もう1つの副次的な課題です。

これまで自分で得た所得は給付が減らされて相殺されてしまったわけですが、これでは確かにやる気をそぐだろう。自己所得分についていは、かたちの上ではお金を積み立てておいてもらい、自立をする段階でそのためのコストを充当するなどのために、お金を使ってもらう。いわば自立への発射台を準備していこうというのが、いま議論されている1つのアイデアであるわけです。

もう少し大きな枠組みから言えば、これも長らく議論されていることですが、給付付きの税額控除などで自己所得を補完していくことも第二のセーフティネットの機能を果たすことになると思います。給付付き税額控除の一種のであるアメリカの勤労所得税額控除は、自分自身が所得を得ていくと、その分、給付が減るどころか、一定水準に至るまでは給付も増額していく。つまり、働いて所得を得る効果が倍増していく仕組みになっています。これも雇用というロープが細くなってしまったいる事態には有効な政策手段です。