まちづくりはコミュニティの絆と徹底した話し合い

─つい最近も玉浦西地区のまちづくりに関する報告書が出され、着々と復興に向けた取り組みが進んでいる印象を持ちます。玉浦西地区のまちづくりに取り組むに当たっての課題、またはこれまでの取り組みについて同じように被災地からの復興を目指している方々に何か紹介できるようなことがありましたら、お願いします。

東日本大震災のような震災の発生に備え、全国のいろいろなところで考えていただきたいと思うメッセージがあります。一つは、今までのコミュニティですね。家や作物は津波で流されてしまってなくなってしまいましたが、人の絆はずっと続きます。おじいちゃん、おばあちゃん、その前の世代から続いてきているものです。この目に見えない人の絆というのが何よりの財産だということ。そこが原点だと思い、それを大事にすると復興はうまくいくのではないかと思います。

他の自治体に行って驚いたのですが、仮設住宅の建設が間に合わなかったのでくじ引きでやってしまった。これは仕方のないことだと思います。家をなくされた方がたくさんいらっしゃるのに、ほかの方は体育館で、ある集落の方だけにというわけにはいかないですよね。それでほとんどの自治体がくじ引きにしてしまった結果、今までのコミュニティがバラバラになってしまった。

岩沼の場合は避難所も一緒。仮設住宅は抽選にしなかったのです。市長さんの英断です。集落ごとにまとまって移ったので体育館から仮設住宅へずっと一緒に移動しています。

驚いたのですが、リーダーシップのある責任感の強い方がいらっしゃって、体育館に移る時にはその方が、自分たちは体育館の入り口のいちばん寒いところをとる。誰も行きたくないところに、最初に手を挙げて移ったのです。風がビュービュー吹くところは誰もがいやですから。岩沼の場合はそういう形で仮設住宅も全部集落ごとですから、コミュニティの絆はずっと消えないで続いて、むしろ強まっているのではないでしょうか。体育館にいた時、4月に新社会人になる方がいて、背広も何もない。みんながカンパして新しい背広と靴と一式そろえて、体育館の中から拍手で出勤して行った。そういう意味では絆というのが、大事かなと思います。

それと、自分たちが暮らす町ですから、絶対に自分たちで考えなければいけません。行政が、あなたはここに住んでくださいねというのは簡単かもしれないけれど、自分の暮らす場所ですから、不満が残るし、何かおかしい。1軒の家を建てるのであれば、想像はつくと思いますが、100人、200人の人が住む村をつくる、集落をつくるなんて経験がないですよね。ですから、大事なことは徹底的な話し合いです。

いくら時間がかかったとしても、もっともっと長い時間、住むことになりますから。自分の子ども、孫、その次の世代のことも考えなければいけない。だからこそ、大事なことはとことん話し合う。私がルールにしたのですが、話し合う時には相手を非難しない。あの人はあんなことを言ったからだめだとか、陰口を言わない。その代わり、何でも好きなことを言う。徹底的に話し合う、相手を決して非難しないという単純なルールです。多数決は取らない。時間はかかりますが、これを守るとだんだんうまくいきます。

難しいように思えるかもしれませんが、回を重ねていくと、妙なこと、突拍子もないことを言う方も、相手の話を聞くとだんだん納得してくるのです。ほかの人にあなたはだめですよと言われると、そこで感情的に対立してしまいますが、自分が徐々に納得して、こういう意見もあるのかという心のゆとりが出てくると、おのずと着地してくる。

もちろん、全部が全部というわけではないですが、基本はそういうやり方かと思います。