フリーアクセスが抱える問題

―日本の医療現場が、コンビニ診療の問題を含めてさまざまな課題を持っていると言われております。平均受診回数の多さ、入院日数の長さなどが日本は特徴的だと思いますが、そのような課題について先生はどのようにお考えでしょうか。


半世紀かけて日本の皆保険体制は毎月自分の支払い能力に応じて払っていれば誰でも、いつでも、どこででもそれほど重い負担なく医療サービスを受けられるという体制をつくってきたわけですが、どこででも受けられるというのはいろいろ問題点があります。自分で自由にどこの病院へ行こうか、どこの診療所でも行けるというフリーアクセスは日本独特の仕組みです。それをやっていると、どういうことが起きるか。気楽に軽いけがでも風邪でも大病院に行ってしまう。そうすると、大病院では1日の外来患者数が5,000人などというすごいところが出てきてしまうわけです。本来病院は専門的な医療を施し、入院機能を果たすべきところが、外来と入院とがごちゃ混ぜになってしまっている。病院自体も医療法上は一般病床と療養病床と二つの区別しかなくて、目的や機能が明確ではない。病院と病院間の分担、病院と診療所の分担ができないことが、長い間日本の医療の宿題になってきたのです。

そこをどうしていくのか。私たちは病院に行くのを当たり前に思っていますが、欧米では少なくとも病院は入院機関であって、外来の患者さんは基本的に受け付けないのです。行こうと思ったら、かかりつけのお医者さんにまず診てもらい、紹介してもらってから行く。要するに診療所では手に負えない病気を引き受けるのですが、患者が自由に選べる日本の仕組みは国際的には特異な例です。

ドイツでも診療所は社会保険方式ですから、わりと自由に選べるのですが、入院は診療所の医師の紹介がないとできないのです。フランスは、病院は外来受付をやっていないので基本的に行けないのです。

でも、私たちから見れば日本の医療制度はとても便利です。どこへ行ってもいいというのは選択肢があって、そのよさは確実にあるけれど弊害も出ているのが現状ではないかと思います。