生きがいと役割で健康な暮らしを
―高齢化がどんどん進む中で、我々国民一人ひとりはどのように医療や健康問題に関わっていくべきでしょうか。
医療に特化して考えると難しくなりますが、健康であるというのはどうやって健康なのかというと、働いているとだいたい健康ですよね。生きがいを持てる趣味とか、そういうものを持っている人は健康ですよね。
長野県がピンピンコロリの一番有名な県とされてきてとても長生きであるし、しかも医療費が少ない。では、長野県の人はほかの県とどこが違うのか。毎日健康についてものすごく気を付けているのかというとどうもそうではない。ただ、長野県の場合はご高齢になっても働いている人の割合が高いのです。特にまだまだ農業、林業といったものが残っている地域でもありますし、自営業の方が多いということです。
自分の年に合わせて働けるような社会を作っていく。意欲さえあれば年齢に関係なく生きがいを求めて働ける社会を作る。そっちのほうに向いたほうがいいと思います。あんまりこの病気にはこういう療法がいいとか、この病気にはこういう食事がいいとか、そんなことばかり毎日考えていられない。生きがいが得られる社会にすることが、健康で長生きできる社会を作ることにつながるのだと思います。だからむしろそっちのほうに持っていく。
それでなくてもこれだけ少子化が進んでいくと働き手がいなくなって、特に田舎はお年寄りばっかりになって、どうやってその地域を支えていくかということは難しい。それこそ郡部のほうこそ年齢に関係なく働ける。あるいは無理して稼がなくてもいいわけで、ハーフタイムでもいいから、土曜、日曜だけでもいいから、何か役割を持てるという、それこそボランティア活動も含めて地域のために役割が持てる社会づくりをすることが実は一番長生きというか、医療費を適正に使うのには一番いいのではないかと私は思っています。
―高齢者の方々がいかに最後まで元気に働けるかということが、医療の問題だけではなく年金や、少子化対策を含めて全般的に社会保障や、生きがいを考えるキーワードと言うわけですね。
国民会議で子育て支援を最初に持ってきたのは、それをやらなければ日本の将来はないよという危機感です。子どもが生まれない社会に未来はないです。だから子どもを産んでみたいと思える社会、子育てが楽しいと思える社会をつくらなければ、医療も介護も社会保障全体成り立たないわけです。
2040年にこういう社会になりますよと言っているけれど、そういう社会にしてはならないのです。子どもがいなくなり、高齢化率40%、それはもう日本全体の沈没を意味しています。長生きができる、こんな喜ばしいことはない。これを変更してはなりませんが、少子化のほうは変革ができるのです。子どもを産んでもらうことは明日からでもできるのですから、子どもを産んでみたいと思える社会にしていく。子どもを産んだら、子育ては楽しいと思ってもらえる社会にしていく。そのことを最初に私たちが報告書で打ち出したのは、その危機意識とか問題意識からです。そこに焦点を当てればおのずから生きがいって何だということに焦点が絞られると思います。お孫さんがいる人はイクジイになってほしいし、イクジイをやれない人は地域の子育ての応援をしてくださればいいと、そんなことを考えています。
―医療の問題から、社会的なつながりの中での子育てや生きがいについてと、幅広いお話をいただき、大変ありがとうございました。