年間平均受診回数はスウェーデンの4倍

―この8月に社会保障制度改革国民会議の報告書が出されました。少子化対策、医療・介護、年金、この三つの分野を検討されていますが、特に医療・介護の分野については、かなり詳細な課題の提起がされているように受け止めました。
今回の医療・介護、特に医療に関する国民会議の報告書の中で、特に評価されるべき点についてご紹介いただければと思います。

病院、診療所に行く回数がものすごく多いところは、そのままでいいのでしょうか。誰でもいつでも受診ができるという体制はどうしても必要ですが、どこででもいいというのは疑問だと思っています。

ちなみに年間でどれだけ診療所に通っているか。日本の場合、病院も入ってしまいますが、平均すると健康な人も若い人も含めて年間で13回ぐらい行くのです。オランダですと平均6回ぐらい、スウェーデンですと3回ぐらいしか行かない。桁が違います。しかも日本で75歳以上の後期高齢者で、いま現実に診療所や病院に外来で通院されている方の年間平均受診回数は45回ぐらいで、ほぼ毎週行っているということです。

なぜ、オランダやスウェーデンが少ないのか。オランダは社会保険方式でやっている国、スウェーデンは税金でやっている国ですが、両方とも共通しているのは国民に家庭医への登録を義務付けていて、「自分はこの先生にかかります」とかかりつけ医を決めておいて、そこに行けば何でも相談できるわけです。オランダやスウェーデンの家庭医は、内科と外科だけではなく耳鼻咽喉科や眼科などの検査や処置も全部やってしまいます。男性のお医者さんが妊産婦検診までやっていますから、すごいです。そこへ行くと、総合的にみんなの相談にのってくれるのです。

日本のおじいちゃん、おばあちゃんたちは、今日は内科の先生のところへ行って、明日は耳鼻咽喉科、明後日は眼科に行くというはしご受診です。そうなってしまうと、回数がものすごくなってしまう。これだといくらお医者さんがいても、間に合わないのです。やはりかかりつけ医をちゃんと見つけて、なるべくかかりつけのお医者さんに何でも相談して、病院へはそこの紹介で行ってもらうようにできないか。

そうすると、かかりつけ医の機能を持っている「総合診療医」を育成しなければいけない。また、かかりつけのお医者さんが患者さんを診療室で待っているだけではなく地域に定期的に訪問診療をしてくれて、いざというときには往診もしてくれるという機能を持ってもらう。これは制度上「在宅療養支援診療所」と呼んでいますが、在宅療養支援診療所のような24時間対応のかかりつけのお医者さんを増やしていかなければいけない。

それから国民会議で議論したのは、患者側がいきなり病院に行く場合は医療費を高い負担にしましょう、そこまでやるしかないだろうということです。だからかかりつけ医を持った方は、紹介されて病院に行けば自己負担が少なくて済むけれど、病院直行組の方はちょっと高い値段を取ろうという提案をしました。私は、ここは必ず踏み切らなければいけない改革の第一歩だと思っていますので、積極的賛成派でした。