求められる地域医療改革

―一方で医師不足ということがこの間盛んに言われています。つい最近も埼玉で救急患者の受け入れ拒否とマスメディアは報道しましたが、実際には受け入れ困難です。もう少し医師の人数を増やすことにもっと注力すべきなのか、あるいはチーム医療や看護職員の拡大など幾つか選択肢があると思います。優先順位からすると、まずかかりつけ医制度の導入をメインストリームにしながら、総合的に政策を打っていく、そのようなお考えですか。


そうですね。人口当たりの医師数から言えば、確かに日本の医師数は少ないと思います。養成を急がなければいけないのですが、いまの医療提供体制のままであればいくらお医者さんや看護師さんを増やしても、足りないということになってしまうのはどこに原因があるかと言うと、病院に問題があります。病院の目的と機能が明確になっていないので、同じような機能を果たす一般急性期の病院がいっぱいあるわけです。

例えば富山県で脳卒中対応の病院が22もあって、脳外科の先生たちは全然足りない。これではいけないと、脳卒中対応の病院を9カ所に集約したのです。そうすると、脳外科の先生たちをそこに集中的に置けるので1人しかいなかった外科医が5人、6人いて、2チーム組んで非常に楽なローテーションで対応できるようになった。残りの脳卒中対応をやめた病院は、例えば高齢者中心の一般急性期の病院に変わっていく。あるいは外来中心に変えていく、そういう機能分化をやっています。

今度の国民会議でも病院の機能をちゃんと明確にしようと、高度急性期のものすごく難しい医療をやるところ、一般急性期、一時的に預かる亜急性期の病院で、回復期のリハビリテーションも兼ねた病院にする。それから長期の療養の病床と明確に病院の機能を分けていく。そうすることによって、そこにお医者さんや看護師さん、人もモノも金も集中的に投入して、入院期間を短縮してベッドの回転率を速くする。早く退院をしてもらって、病床数そのものは増やさずに機能を効率的に動かすことによって対応していく。

このようにしていかないと、いくらお医者さんを養成しても足りない。早く退院してきた人たちをどこで引き受けるのかというと言うと、それは地域です。地域でかかりつけのお医者さんたち、あるいは医療と介護の連携でもって、支えていく。慢性期の病気を抱えて血圧が高い、糖尿病気味、高脂血症などは完璧には治らない。そのため、障害を抱えて1人では暮らせない障害者と見て「支えるケア」を提供する。そういう医療にしていこうと。

報告書には、川上のほうの病院を改革したならば、それを受ける川下のほうの地域医療と地域介護を変えなければ、成り立ちませんよということが書いてあるのです。それも私は率先して賛成した1人です。