復興プランは広い構想力で

寺島 実郎 氏

(一財)日本総合研究所理事長
多摩大学学長
㈱三井物産戦略研究所会長

―地域産業の復旧、復興の課題、雇用の創出の問題とさまざまな課題がありますが、いま現在の震災からの復旧、復興を目指す一連の流れの中の現状について、先生は全体としてどのように見ておられるのか、その辺りのお話をまず伺えますか。

県別、市町村別の復興計画のようなものは一定のレベルで出来上がっており、その目標に向けて動いていないのかといったら、動いていると言っていいと思います。広い意味での東北圏として、今回被災した3県に加え日本海側の東北、つまり秋田や新潟さえも視界に入れた東北ブロックは、震災以前から人口が2030年ぐらいまでに少なくとも3割以上減り、高齢化が極端に進むのではないかと予測が出ていた地域です。そこをいったいどういう産業でよみがえらせるのかという、大きなグランドデザインというか構想が一切描けていない。復興庁はあるけれども、広域の構想力に立つ復興プランがないというのが、今回の決定的な弱点だと思います。

例えば、被災者の方でふるさとを離れて遠くに住んでいる方も、まだ万単位でいるわけですが、帰りたくても帰れない。なぜならば、いったいどういう産業で飯を食べていけるか、そういう展望が一切立たないからです。がれきの処理とか、除染とか、高台に家を建て直すというプランは一見、進んでいるかのように見える。それは確かにお金を付ければ、そういう事業は動くでしょう。ただ、実際に生身の人間がふるさとにどういう産業をつくり直し、生活を建て直していくのかということに関しては、大きなグランドデザインがない。

海外に行って最近、非常に困ることがあります。今年もアジアに何回か行きましたが、日本人は優れた人たちが多いから、さぞかし自分たちにとって参考になる復興プランが進んでいるだろうと真剣に聴いてきます。震災より2年経ったので、「どう進んでいるのか、グループを組んで見に行きたい」「ぜひ、どういうプロジェクトをどういう大きなグランドデザインの下で進めているのかを見せてくれ」と言うわけです。なるほど、がれきの処理が済み、広々とした殺伐とした空間が残されている辺りを見るかもしれないし、高台に家が建っているところを見るかもしれない。しかし、いったいどういう産業でこの地域をよみがえらせようとしているのかということを伝えるものが本当にあるのだろうか。

決定的なのはそこだと思っています。産業の基盤の創生が全くできていない。震災の後、例えば東北被災地域のものづくり産業も、まともな経営者であったら、やはりこの機会にアジアに出ようと思う。今でこそ若干円安に反転したとはいえ、円高圧力、電力価格の高騰という大きな流れの中で、競争力を失ってきていることは誰でも分かるわけです。アジアのダイナミズムをにらんだら、この機会にアジアに出てしまおうか。特に、世に言う産業の空洞化というのは、この被災をきっかけにして一段と進行しているのが、この2年間ではないのかと思います。

そういう意味においては、現下の状況は、被災した県がだめだという意味で言っているのではありません。あるいは、市町村がだめだという意味で言っているのでもない。そもそも、この地域をどういうコンセプトでよみがえらせようとしているのかという根幹の思想が出来上がっていないところが最大のポイントだというのが、私の今の印象です。